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浅間尾根とフクジュソウ

御前山と大岳山

浅間嶺展望台から望む御前山と大岳山

浅間尾根の登山道は、かつての交易路・生活路であり、多くの馬頭観音像ほかの石仏が残っています。起伏はゆるやか、展望は良好、交通アクセスも悪くありません。

バス停 西東京バス: 武蔵五日市駅 → 浅間尾根登山口 登山口
バス停 西東京バス: 武蔵五日市駅 ← 払沢の滝入口 登山口

地図 地理院地図: 浅間嶺(小岩浅間)

天気 浅間尾根の天気: 檜原村 , 浅間嶺 , 武蔵五日市駅


コース & タイム 鉄道駅 武蔵五日市駅 バス停 7:19 == 8:16 浅間尾根登山口バス停 8:18 --- 9:06 数馬分岐 9:08 --- 9:16 サル石 9:17 --- 9:34 一本松 9:36 --- 10:10 人里分岐 10:11 --- 10:15 伐採地(展望良好)10:26 --- 10:37 浅間嶺山頂 10:37 --- 10:50 浅間嶺展望台 11:22 --- 12:20 そば処 12:25 --- 12:32 峠の茶屋 12:39 --- 12:56 時坂峠 12:56 --- 13:05 フクジュソウ群生地 13:26 --- 13:42 払沢の滝駐車場 13:42 --- 13:52 払沢の滝 14:00 --- 14:08 払沢の滝入口バス停 バス停 14:29 == 14:52 武蔵五日市駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
浅間嶺、浅間嶺展望台 せんげんれい:標高 903m、せんげんれいてんぼうだい:標高 890m
単独 2016.3.3 全 5時間50分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:

3月3日(木)、快晴となった桃の節句、山で春の兆しを感じようと、奥多摩の浅間尾根を歩いてきました。浅間嶺展望台では、真っ白な富士山はもちろん、奥多摩の大展望を独り占め。青苔の生す谷の流れは、手に心地よく温まり、時坂(とっさか)ではフクジュソウがまぶしく、可愛らしく咲いていました。

段落見出し浅間尾根登山口バス停からアプローチ

数馬行きのバスは、元郷あたりから小学生たちが乗って来ました。通学バスとして時刻表が組まれているようです。ランドセルに付けられた熊鈴のようなベルが鳴って、カランカラン、車内は何ともにぎやかに。子供たちは、みな「払沢の滝入口」で降りました。まだ払沢の滝に向かう人はいません。このバスはここで折り返し、数馬へと向かいます。

その後、笹平で1人が降りると、残った乗客は3人になりました。そして私が「浅間尾根登山口」で下車。この便はきっと赤字でしょう。数馬に向かって走り去るバスを見送ると、まず昭和ムードのバス停を撮影しました。向かいに材木置き場があり、辺りは雑然とした雰囲気です。こんなところでぜいたくを言っても仕方ありませんが、早く立ち去りたい気分になりました。私自身も含め、小ぎれいなバス停から歩き出したい人には、上川乗か人里(へんぼり)がお奨めです。

檜原街道を少し戻ります。大羽根山と笹尾根への登山口を右に見ると、すぐ先のカーブに雑多な看板がたくさん並び、北に緩やかに下る道が分岐していました。行く手の民家の犬が、こっちを見て吠えています。犬には無関心を装いながら、その前を通り過ぎると、吠えるのをやめました。つづら折りの林道をゆっくりと登って行きます。「浅間坂」「浅間湯」などの看板で左の道に入り、なおも坂道を上って行くと、風呂屋さんの前を通り過ぎました。

段落見出し浅間尾根に乗る

気が付くと、檜原街道がはるか下方に見えました。南に笹尾根が望めます。大羽根山、笛吹峠、丸山などのあたりでしょう。西には三頭山の頭をぎりぎりに望めます。坂道を下りて来た小柄なおばあさんが、「お早うございます。早いですね。」と言ってくれたので、顔を見合わせて笑みを交わしました。いつしか舗装がなくなっています。山道を少し登ると、コンクリート舗装の林道を斜めに横断しました。リュックを下ろし、準備運動をします。

空気が暖かかったので、春や秋の山と同じ程度の身支度をしました。さあ、登るぞ! はじめ、もやしのようにヒョロヒョロと立つ杉が密植された山林を、ゆるやかに登って行きます。間伐の手が回らないのでしょう。いくらも登らないうちに、落葉樹が増えて、道が明るくなりました。左から浅間尾根がどんどん近づいてきます。この分だと、あっけなく浅間尾根に乗ってしまいそうだと心配になったので、歩くペースを落とし、ぽかぽか日和を楽しむことにしました。

数馬分岐に到着。北西を指す腕木に「風張峠」と書かれています。ベンチが2脚、馬頭観音像が1体あり、その傍らに「思いつきルート変更は事故のもと!!」と書かれた古い看板が倒れていました。これより先、いくつもの馬頭観音像などの石仏を見ることになります。浅間嶺まで大きな登り下りはありません。きょうの消費カロリーは、わずかでしょう。帰宅後に調べたら、払沢の滝入口から浅間尾根登山口までの標高差は約340mで、これをバスで登ってしまったのでした。

段落見出しゆるやかに稜線漫歩

これより楽しい稜線歩きです。ほぼ東西に横たわる浅間尾根では、南面に笹尾根、北面に御前山と大岳山、およびそれぞれの派生尾根が見えるのですが、南面と北面とが同時にすっきりと見えることはほとんどありません。登山道はかつての生活路であり、小ピークは南側か北側を巻いて、体力の消耗を最低限にするように付けられています。まだ冬枯れのこの季節、尾根南面は枝越しに明るい日差し、北面には踏むとバリバリと音のする霜柱や残雪がありました。

眺望の他に、途中の目立つアトラクションとしては、昔の旅人たちが拝んだ馬頭観音像ほかの石仏、サルの手形が付いているというサル岩くらいなものでしょうか。まだ花や虫は出ていません。当然ながら鳥たちも繁殖の季節ではありません。でも木々の芽は膨らみ始めています。木や草を揺する風は、やさしい音と香りを運んできます。踏みしめる落ち葉は秋よりも柔らかく、沢の水は温み始めました。何より、山を歩くことは、それ自体が喜びです。

この日の最高地点である一本松(930.2m)の峰は、巻き道もありますが、尾根を歩いて登頂しました。山頂には三等三角点があります。今は樹木に囲まれて展望も利きませんが、かつては測量に役立つほどの視界が開け、一本の松が立っていたのかもしれません。周囲の樹木はほとんどが杉でしたが、松もかなりありました。私は北東の尾根を辿って登りましたが、南側の小尾根に歩きやすい道があります。その小道を下の巻き道まで下りると、傾いた石仏がありました。

段落見出し伐採地の大展望

人里分岐の先で、トレイルランナーとすれ違いました。この日、山で出合ったのは、朝あいさつしたおばあさんと、このランナーの二人だけです。ただし、峠の茶屋の舗装路まで下りると、自転車(ロードバイク)でツーリングをする人々がみられました。きょうはこんなに天気がよく、眺望に恵まれ、時坂のフクジュソウも咲いているのに、ハイカーが全く見られません。おそらく新雪や新緑の頃とか、桜や紅葉の季節になれば、浅間尾根が賑わいを見せるのでしょう。

この日、最大の眺望は、人里分岐(へんぼりぶんき)のすぐ東、北面に大きな伐採地を望む場所にありました。まず、特徴ある大岳山が目に飛び込み、東に延びる馬頭刈尾根がその末端まで見通せます。次に惣岳山を肩に乗せた御前山と長い湯久保尾根。小さな山上集落もよく分かります。そして心を躍らせるのが、遠く展開する鷹ノ巣、雲取、飛龍の山なみ。この展望地は眼下が広大な伐採地なので、天地に深さがあり、吸い込まれそうな空間になっています。

展望地から2分ほど歩いたら、分岐点がありました。道標の腕木は、左が「浅間嶺」、右が「尾根道を経て浅間嶺・休憩所」となってます。きょうは浅間尾根を歩きに来たので、迷わず右の尾根道に進みます。そして8分ほどで浅間嶺の山頂に到着しました。展望のない山頂に、道標が立っていますが、山頂標はありません。「小岩浅間」と書かれた小さな私製の標識が、立ち木に括り付けてあるだけでした。

段落見出し浅間嶺展望台より富士山を望む

山頂の道標が「浅間嶺・休憩所・浅間神社」を指す方向に下ります。3分ほどで浅間神社の小さな社にやって来ました。裸の鉄筋を簡単に細工した、小さな鳥居が傾いて立っています。社の中には石仏が納められ、アルカイックスマイルのような笑みを浮かべているように見えました。きょう2回目の笑みを交わします。社から少し下ると、トイレと東屋のある休憩広場に降り立ちました。ベンチが半円形に並べられています。地面はややぬかるんでいました。

すぐに展望台に登ります。丸みを帯びたその小山を見上げると、冬枯れの落葉樹がまばらに立ち、青空が透けていました。一面に敷き詰められた落ち葉を踏みしめ、スリップに注意しながら登って行きます。そして「浅間嶺」と書かれた大きな標柱の立つ展望台に到着。右奥に真っ白な富士山が見えます。富士山は、ここでどれだけ多くの人々を感動させてきたことでしょうか。でも今ここにいるのは私だけ。思いっきり愛でてやりましょう。

北面は、先ほどの展望地とほぼ同様ですが、西端には三頭山も見えました。ベンチ代わりに置かれた太い丸木に腰を下ろし、昼食にします。南向きに座るか、北向きに座るか、迷うような、いずれもすばらしい景色でしたが、はじめ北向きに座って、背中の汗を乾かすことにしました。ところで、浅間嶺はどちらの峰でしょうか? おそらくそれは、浅間神社のある山頂も、この展望台も含めた山の名称なのでしょう。

段落見出し太陽の傾かないうちに

展望台では30分ほど休みました。次は時坂の福寿草を見に行きます。東方の桜並木を通り抜け、鞍部に下りました。ここから松生山へは往復60分ですが、太陽の傾かないうちに時坂に着きたいので、このまま下山します。ところが、枯葉でびっしり覆われた斜面で、うっかり足を滑らせ、バランスを崩し、積んであった丸木に腕と脚を強打してしまいました。北斜面は霜柱が立つので、落ち葉の下にはぬかるみがあるのです。痛かったのですが、外傷はありませんでした。

道標の立つ十字路で、小岩バス停と上川乗バス停への道を分けます。「時坂峠2.8km、払沢の滝入口バス停4.7km」と書かれた方向に右折します。少し進むと、左手の御前山や大岳山が、樹木によるフレーム効果でひときわ大きく見えました。鋸山の左の肩に見える三角錐は、蕎麦粒山でしょうか。ここから先のトラバース道は、右手山側が落葉樹林、左手谷側が針葉樹林となった、すてきな道です。落葉樹林側には、「カタクリ観察路」のミニ標識がありました。

やがて登山道は谷すじに下りて行きました。緑の苔の生した小岩を縫って、キラキラ輝く水が心地よい音を立てて流れています。試しに両手で水を受けてみると、わが家の水道水よりも温く感じました。やさしい冷たさです。さらに下ると、水車小屋で使う古い水車が道脇に置かれていました。何故こんなところに? するとその先に、現役の水車小屋を備えた、ちょっと瀟洒な造りの「そば処」がありました。水車でそば粉を挽くのでしょうか。店は「本日休業」でした。

段落見出しこんにちは、フクジュソウ

そば処の先で、舗装された林道に出ました。右手にそびえるのは、天領山や松生山を擁する尾根でしょうか。そして林道が峠に達すると、またまた御前山と大岳山が展望できました。茶店があり、「峠の茶屋」と「高嶺荘 創業1650年 始祖 瀬戸沢 馬方宿」の看板があります。自転車ツーリングの男性たちが入れ代わり立ち代わりやって来て、この峠で止まってしばし山を眺め、また引き返して行きました。

林道を東に下って行くと、右手に大きな伐採地があり、近い松生山の尾根を雄大に、また遠い馬頭刈尾根を小さく望めました。道の真ん中に愛車を立て、撮影しようとしている人がいます。スタンドのない自転車なので、立てるのに苦心しているようです。林道にガードレールがないので、カッコいい写真になるでしょう。この先で時坂峠への林道が左に分岐します。道標にも書いてありますが、浅間嶺休憩所から時坂峠に続く道は「関東ふれあいの道」でした。

時坂峠は風が吹き抜けていました。この峠から見渡す山里の風景は、深い奥行きを感じさせます。説明板に、かつて木炭を積み出し、日用品を持ち帰る牛馬の通った道だとあります。そして時坂の集落に下りて行くと、民家の裏の斜面にフクジュソウがたくさん咲いていました。可愛らしい黄色の花は、光沢のある花弁をパラボラのように開いて咲き、太陽光を集めているかのようです。この群生地は、保護地っぽくないところに和みがあります。ここで大道草を食いました。

段落見出し払沢の滝へ

払沢の滝に向かいます。カーブの多い車道を短絡する小道を下り、最後に大きなトイレのある駐車場に出ました。ここから滝まで15分とあります。滝への遊歩道は木のチップが敷き詰められ、歩きやすくなっていました。「日本の滝百選」に入る滝なので、とっくりと眺めようと、速足で時間を稼ぎます。到着し、目の前の滝をしげしげと眺めました。..... どうも私の感覚では、百選に入るのは苦しそうです。すみません。でも氷結の写真は美しいと思いました。

払沢の滝入口バス停にゴールインすると、目の前に豆腐屋さんがありました。ガラス戸を引いて店内に入ると、カウンターは3人立つのがやっとの狭さ。ここで「うの花ドーナツ」を試食できます。家族への土産に3個買いました。まだ少し時間があります。辺りをぶらぶら歩くと、北に高黒岩とつづら岩と思しき岩峰が見えました。よく見れば、天狗滝も見えるそうです。バス停に戻ると、藤倉の方から、武蔵五日市駅行きのバスが時刻表どおりにやって来ました。

帰宅すると、誰もいませんでしたが、ミニチュアのひな壇が飾ってありました。そっと、お土産のドーナツを供えます。ひな壇には12体のひな人形が座っていますが、ガリバー旅行記の小人国みたいで、12人が毎日食べても1か月ほどかかりそうです。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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