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六方の滝

六方の滝

六方の滝

六方の滝は、柱状節理の美しい岩の上を流れ落ちます。

バス停 箱根登山バス: 湯河原駅 ⇔ 鍛冶屋 登山口

地図 地理院地図: 六方の滝

天気 六方の滝の天気: 湯河原町 , 幕山


コース & タイム 鉄道駅 湯河原駅 バス停 7:15 == 7:22 鍛冶屋(五郎神社) 7:23 --- 7:57 幕山登山口(梅林)7:57 --- 8:27 大石ヶ平 8:27 --- 9:05 白銀林道 9:07 --- 10:02 六方の滝 10:48 --- 11:51 大石ヶ平 11:51 --- 12:45 自鑑水 12:47 --- 13:07 幕山 13:30 --- 14:02 梅林最高地点 14:11 --- 15:02 鍛冶屋(五郎神社) バス停 15:15 == 15:27 湯河原駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
六方の滝 単独 2017.10.09 全 7時間39分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

10月9日(祝)は、やや汗ばむ陽気。奥湯河原に六方の滝を訪ねました。目的は、ずばり柱状節理を見ること。実際、至近距離で柱状の岩と水とを眺め、手で触ることもできました。滝壺の霧に浮かぶ虹、ミストに冷やされる顔の心地よさ。他に誰もいないのを、もったいなく思いました。

段落見出し 五郎神社から幕山登山口へ

湯河原駅から鍛冶屋行バスに乗ったのは、たった二人でした。ハイカーは私だけ。終点で降りると、そこは五郎神社の鳥居前でした。御霊(ごりょう)神社というのはよくありますが、五郎神社は珍しいのではないでしょうか。さっそく幕山登山口方面に向かいます。アスファルト道は大きく蛇行しているので、近道であるコンクリート道を直登しました。すぐにアスファルト道に合流。あとは、朝の太陽を背に、ひたすら西方を目指して歩くのみです。

さて、湯河原は暖かい湯の町。白い茶の花や、黄緑色のミカンを見ながら歩いて行くと、心も温暖になるようです。道の下水溝から硫黄の臭いが立ち昇るところがありました。温泉の排水が流れているのでしょうか。カーブで東を振り返ると、逆光の相模湾が、まだすぐ近くに見えました。行く手西方には、モコモコした曲線の山なみが続いています。あのどこかに六方の滝があるはずですが、まだ見当が付きません。

道は、新崎川の左岸に沿って山奥へと続きます。道と川とが接近すると、心地よい渓流音が聞こえてきました。川幅はすでに狭まり、岩と岩との隙間から白い泡水が流れ落ちています。五郎神社から約30分、右手の梅林に「幕山登山口」の標柱が立っていました。そのすぐ先で、一般車両止めのゲートを通過。歩行者天国同様になった、のどかな林道をテクテク、30分ほどで大石ヶ平の橋に到着しました。再び幕山への道を右に分け、道標が「白銀林道」を指す方向に進みます。

段落見出し 中尾沢へ

林道の傾斜が少し増すとともに、高揚感も出てきました。道端を紫色に彩るホトトギスやフサフジウツギ。優しい薄紫色のノコンギクとツリガネニンジンも可愛らしい花。地表すれすれに超低空飛行しては、トンボ返りするオニヤンマ。よく見かける白い蝶は、ウラギンシジミ。止まって翅を開くと、鮮やかな朱色を見せるので分かります。大石ヶ平から15分ほどで、青いゲートがあり、ようやく舗装道路が終わりました。ゲート右手の山道に進みます。

山道は、はじめ草がボーボーに生い茂っていました。でも土を踏む足が喜んでいます。道が低木の茂みに入ると、あまり草がなくて歩きやすくなりました。ところどころにアケビの実が落ちています。きれいな紫色の実は、まだ落ちたばかりでしょう。見上げても、アケビはなかなか見つかりません。暗がりに真っ赤なキノコ(ベニチャワンタケ?)が生えていました。シソに似たヒキオコシの葉を揉むと、さわやかな芳香が手に付きました。

白銀林道に飛び出しました。左手、1分も歩かないところに道標があり、「土肥大杉跡」を指す方向へ進みます。白銀林道とは早くもお別れ。これより小沢を越えたり、笹薮をかき分けたりする「白銀ハイキングコース」です。そして「土肥大杉跡 1,100m」の道標を見て、白銀ハイキングコースとも別れました。紫色のテープに導かれ、中尾沢の左岸を登って行きます。岩から岩へと飛び石ができるので、靴を濡らすことはありませんでしたが、滑りやすい苔には要注意です。

段落見出し 感動、六方の滝

正味10分ほど中尾沢を遡行すると、右手に優美な滝が現れました。紫音の滝と言うそうです。滝の水は落ちて小岩を打ち、上がる飛沫の中に、きれいな虹がかっていました。もう一つ、すぐ上流に細長い滝があります。その右の急斜面に幾本かのお助けロープが設置されているので、これを辿り、その急斜面を登って行きました。山慣れした人なら、足場をしっかり確保すれば、問題なく登れると思います。そして紫音の滝の上流に出ると、目指す六方の滝が見えてきました。

六方の滝を至近距離から見上げます。すっくと立つ柱状節理の岩を、優しく洗うように流れ落ちる白滝。その姿を形容するとしたら、「豪快」でもなく、「優美」でもなく、ましてやイグアスのように「壮大」でもありませんが、創世のモニュメントと言っていいでしょうか、神秘な引力を感じます。人類が生まれるずっと前から地球は生きていた、今も生きている、と語りかけているような気がしました。思う存分に眺め、水と岩を触り、音を聞き、動く虹を楽しみます。

滝の正面に、腰を下ろすのに好い岩を見つけ、昼食にしました。特等席に座った、星の王子様の気分です。でも、ここで心の感動を語り合う人が、誰もいないのがちょっと寂しい。単独登山の多い私ですが、めずらしくそんな想いがしました。若草の萌え出ずる早春、新緑の初夏、紅葉の秋、氷結(するかな?)の冬、季節を変えて、同好の友を誘って、また来たい。私が造ったのではないけれど、ちょっと自慢したいような気もする、感動と霊感を与えてくれた滝でした。

段落見出し 幕山に登る

来た道を戻ります。白銀林道まで戻ると、道標にかすれた文字で「幕山 3000m」と読めました。地図を見ると、白銀林道を通って自鑑水の近くまで行けそうです。でも林道を3kmも歩くのは気が進まないし、幕山に登るのか下るのか分かりません。幕山には初めて登るのだから、ちゃんと登山道を登ろうと思い、大石ヶ平まで下ることにしました。再びキノコとアケビの山道を下ります。舗装道路に下り立つと、初めて人と出会いました。男女二人で沢に行くようでした。

大石ヶ平からは、整備されたハイキング道を登ります。気温も上がって大汗をかいたので、下着を脱ぎ、体を拭きました。下りて来るハイカーたちと、しばしば出会います。稜線に至ると、そこは幕山と南郷山のほぼ中間点。せっかくなので自鑑水に立ち寄って行きます。南郷山方面に3分ほど歩くと自鑑水入口。さらに3分で自鑑水。そこはゴミの浮かぶ山上池でしたが、波一つない鏡のような水面に、木々や空がくっきりと映っていました。納得し、幕山に向かいます。

幕山山頂では、幾組かの家族連れが食事やお茶を楽しんでいました。残念ながら、大きな展望はありません。ベンチがないので、地面にビニールシートを敷き、しばしティータイム。そして山頂を辞した下り道、うれしくも海が見えました。青い相模湾に突き出た真鶴半島、遠く浮かぶ伊豆大島、初島など。日差しいっぱいの梅林に入ると、色々な蝶もいました。幕岩にはクライマーたち。花を想像しつつ、のどかな梅林の散策路を楽しんで、今朝歩いた道に下り立ちました。

段落見出し あのままで ...

六方の滝は、もっと人気のあるスポットかと思ったのですが、祝日なのに誰とも出会いませんでした。その日は、この滝を人に奨めたいと思いましたが、あの静かな滝のままでいてほしいと、今は思っています。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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