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大沢山・ボッコノ頭・大洞山・カヤノキビラノ頭

ベニバナヒメイワカガミ

大沢山西稜に咲くベニバナヒメイワカガミ

大沢山からボッコノ頭に向かう岩稜には、イワカガミの群落があります。花も葉も小ぶりの、ベニバナヒメイワカガミです。

バス停 富士急山梨バス: 笹子駅 ← 新田下登山口

地図 地理院地図: 大沢山 , 大洞山

天気 大沢山の天気: 大月市 , 笛吹市 , 笹子駅

開花情報 ヤマレコ: ボッコノ頭


コース & タイム 鉄道駅 笹子駅 7:09 --- 7:39 追分トンネル 7:41 --- 8:18 変電所 8:19 --- 8:40 清八山登り口 8:45 --- 9:59 展望地 10:07 --- 10:27 縦走路出合 10:27 --- 10:40 1445m峰(送電線巡視路分岐)10:43 --- 10:58 女坂峠 10:58 --- 11:14 大沢山 11:22 --- 11:42 イワカガミの咲く展望地 11:59 ---(イワカガミ群生地)--- 12:33 ボッコノ頭 12:38 --- 13:28 摺針峠 13:29 --- 13:47 大洞山 13:55 --- 14:08 カヤノキビラノ頭 14:10 --- 14:50 中尾根の頭頂(ベンチと石柱)14:53 ---(間違った尾根を下る)---15:57 名称不詳の林道出合 16:07 --- 16:17 青いゲートと新田沢の橋 16:17 --- 16:40 新田下バス停 バス停 16:47 == 16:54 笹子駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
大沢山、大洞山 おおさわやま:標高 1460m、おおぼらやま:標高 1402.6m 単独 2016年5月12日 全9時間31分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

5月12日(木)、前日の風雨で大気がきれいに洗われた、スーパー五月晴れ。イワカガミの開花を見計らって、大沢山、ボッコノ頭、大洞山、カヤノキビラノ頭を日帰り縦走してきました。山も花も純粋の色と質感を見せ、感動の連続。木々の葉は、まばゆいばかりの萌黄色。山道に華やかさを添えるミツバツツジ、おやゆび姫のように愛らしいイワカガミ。縦走路に立つまで骨は折れましたが、山のすべてから十分な「おもてなし」を受けてきました。

段落見出し長いアプローチ

JR笹子駅発着の場合、行き帰りとも国道20号を通らねばなりません。でも交通量の多い道を歩くのは、最小限にしたいもの。登山に好都合だった早朝の新田(しんでん)行きバスが、2014年春に廃止されたため、バスは下山時に利用することにしました。笹子駅から甲府方面に約20分歩き、追分(おいわけ)で左折します。国道を離れると、別世界のように静かになりました。田植えは既に完了して、光る青田、山々を映す水、細葉のゆらぎ … 美しい日本の農村です。

追分トンネルの南口では、たくさんのツバメが出入りしていました。見上げると、トンネル内にたくさんの巣があります。きっと安全に子育てできる場所なのでしょう。リニア工事現場に向かう道で振り返ると、トクモリとお坊山東峰、それぞれの南尾根を立体的に望めました。いずれも、いつか登りたい尾根です。それにしても、空の青いこと、山の緑の美しいこと、その本当の姿と色彩とを、初めて曇りのない目で見たかのような感動を覚えました。

かなり傾斜のある林道を登って行きます。藤色のヤマフジ、赤いケウツギ、白いウツギなどの花が、距離感を短縮してくれます。行く手に送電線巡視路尾根と、その尾根に立つ3本の鉄塔が見えてきました。2009年7月に一度登り、すばらしい眺望と歩きやすさとで、良い思い出があります。当時植林していた斜面の若木も、7年経って大きくなったことでしょう。山と高原地図には「送電線巡視路荒れ気味」と書いてありますが、できればもう一度歩きたいと思っていました。

段落見出し未知の森に誘われて

東京電力の大きな変電所を過ぎると、その尾根はいよいよ美しく目の前に現れました。2番目の鉄塔から富士山を望め、3番目の鉄塔で稜線に立ったことを憶えています。そして、笹子駅から1時間半、林道終点の清八山登山口に到着しました。さっそく、右手の沢に下りて、送電線巡視路の取り付きを探します。ところが、あたりは様変わりしていて、記憶の中の取り付き口と一致する場所が、さっぱり見つかりません。さてさて、どうしたもんじゃのう…と、思案しました。

沢から少し離れて送電線を眺めてみます。すると、沢の上部から送電線巡視路尾根と並行する尾根を登れば、頂点の鉄塔まで行けそうに思えました。そこで、視界が開けている右岸を探ってみます。すると、沢沿いの立ち木に赤ペンキの鉢巻が2本ずつ塗られていました。登山道でないことは明らかです。でも人が歩いた径ではあるので、これを辿ってみました。やがて赤ペンキはなくなりましたが、問題なく歩けそうです。錆びた洗濯機(?)や燃料缶なども転がっていました。

その後、古い作業道の跡と出合ったり離れたりを、幾度か繰り返しました。できるだけ、右手の太い尾根に接近するよう心がけます。そして、もはや人の来た痕跡の全く見られなくなった、小尾根や小沢をいくつか越えて行くと、とても楽しい雰囲気になりました。初々しい緑がいっぱいの森、シダや苔の美しいロックガーデン、いつ見上げても、真っ青な空を飾る萌黄色の若葉…。そして頃合いを見て、右手の太い尾根に乗りました。もう、引き返すつもりはありません。

段落見出し無名の展望地でのどを潤す

尾根に乗ると、送電線巡視路尾根の南側の、隣の隣の尾根にいることが分かりました。この尾根を登り詰めても鉄塔には行き着きません。でもとにかく、ひたすら上を目指せば、縦走路に乗れるでしょう。ここまで来て、初めてミツバツツジの花が見られました。一般にツツジ類は、日当たりと水はけのよい場所を好むようです。この尾根は、幅もちょうどよく、歩きやすい上に見通しも利くので、元気と自信が倍増しました。

ミツバツツジのひと際きれいな展望地があったので、小休止しました。目の前に本社ヶ丸がよく望めます。東北東はるかに、先々週登った権現山と、足を負傷した三ツ森北峰の鋸尾根も見えました。きょうは夏日と予報され、すでに汗をたくさんかいています。緑茶、水、スポーツドリンクなどを、合計1.8リットル持っていますが、全部飲み切るかもしれません。真っ赤な点々は、つぼみが可愛らしいヤマツツジ。来週あたり咲くでしょう。カラマツも緑鮮やかに萌えています。

清八山登山口(林道終点)から1時間半、ようやく縦走路に立つことができました。現在地は、鉄塔の立つ1445m峰から500mほど南方のようです。まずは、その鉄塔に向かいますが、さすがは本物の登山道、ウソのように足が軽快になりました。西方には、まだ峰々に雪の残る南アルプスが、台風一過の翌日のように鮮明です。富士山は後ろ側になるので、絶好の眺望を逃さないように、時々振り返らねばなりません。

段落見出しミツバツツジの縦走路を経て女坂峠へ

10時40分、見憶えのある1445m峰に到着しました。予定より、ちょうど1時間遅れです。鉄塔の下に行って見ましたが、展望はあまりよくありません。すぐに女坂峠に向かいます。少し行くと、行く手に端正な姿の大沢山が見えました。縦走路の左右には、目の覚める赤紫色の花を咲かせたミツバツツジ。ちょっと貴賓の歓迎ロードみたいです。冬の塔ノ岳を飾る霧氷のトンネルを思い出しました。

女坂峠直前の急な下りでは、まだ万全ではない右ひざをかばいながら、慎重に下りました。と言っても、短い区間です。下り切るとすぐ先の鞍部に「女坂峠 1,372m 御坂町」と記された金属銘板が立っていました。今でも峠道が残っているのでしょうか? 峠の左右を覗いてみましたが、踏み跡らしいものは見られませんでした。かつてこの峠を行き交った人々の姿を、勝手に想像するばかりです。女坂峠というのですから、比較的登りやすかったのでしょう。

女坂峠の先を登り返すと、石積みの擁壁がありました。山中にこんな擁壁を積むとは、何か訳ありの臭いがします。少しは謎めいたものがあるのも、悪くありません。擁壁を過ぎると、ブナ、カエデ類、ミズナラなどが目立つようになりました。やさしい緑の光が、目を潤してくれます。女坂峠から15分ほど歩くと、やや古い道標が立っていました。右の腕木には「笹子駅約2時間(道跡不明瞭)」と書かれています。左は「大沢山約5分」とありますが、実際は1分でした。

段落見出し大沢山とイワカガミの咲く展望地

大沢山頂では、くっきり、きれいな富士山を望めました。誰もいない、静まり返った山頂。エゾハルゼミが鳴いているので、本当は静かではないのですが、「閑さや岩にしみ入る~」と詠んだ俳人の心は分かります。ここで腰を下ろし、水分を補給。冷凍庫で一晩氷らせてきたペットボトルの飲み物は、半分ほど解けていました。ちょうどよい飲み心地です。(あ~美味い!)あるとき二昼夜氷らせたら、カチカチに氷り過ぎて、夕方まで飲めなかったことがありました。

次は、ボッコノ頭に向かいます。大沢山頂から3分ほどで、素晴らしい展望地に至りました。ボッコノ頭に続く稜線は、色々な緑色を含み、南アルプスの白峰三山を背景に、とてもきれいです。左手には、聖岳も姿を現しました。きょうは早朝から、透明水彩絵の具で描いたような色彩ばかり。私は夢をたいていカラーで見ますが、そんな色彩です。秋や冬の空気も澄んでいますが、この萌え出る緑は今の季節ならではの色。その代わり、きょうの紫外線情報は「危険」でした。

その先10分ほど進むと、イワカガミが出てきました。花の色と葉の形から見て、ベニバナヒメイワカガミでしょうか。ちょこんと立って、少しうつむき加減に咲く可愛らしい花は、おやゆび姫を思わせます。膝をつき、低い視線から見つめれば、どの花もみんな「オンリーワン。」よし、たくさん撮影してやりましょう。折よく眺望も抜群なので、昼食もここで決まり。南方に目を向けると、富士山の右に、御坂山、黒岳、釈迦ヶ岳などが、とても近く見えました。

段落見出しお花畑!

引き続きボッコノ頭に向かいます。ところがイワカガミの群落が次から次へと出てきました。花畑が広がり、花はますます増えました。個々の花を撮影していたら、バスに乗り遅れます。ここは急いで集合写真を撮って、前に進みました。幸い(?)イワカガミの群落は、大沢山西面の岩稜に集中していて、それより先ではほとんど見られなくなりました。一方、ミツバツツジは環境への適応力が強いのでしょう。その鮮烈な花は、目に入るたび、脳と筋肉を活性化するようです。

ボッコノ頭では、蝉たちが賑やかでした。彼らは長い地中生活を終えて、今羽化したばかり。短い成虫時代に婚活をして子孫を残さねばならないので、とても忙しいのです。蝉の声のするカラマツやミズナラを見上げましたが、姿は見えません。ところで、「ボッコ」とはどんな意味でしょうか。奥多摩には「赤ぼっこ」という峰がありますが。ボッコノ頭では水分を補給しただけで、次の摺針峠に向かいました。ボッコノ頭で聞いた蝉の声(mp4動画, 14MB)

摺針峠への道では、多くの山野草を目にしました。マイヅルソウ、ボケ(写真はピンボケで割愛)、ツクバキンモンソウ、アオダモ等々。微笑ましかったのは、日当たりを好むマルバダケブキの、大きな葉を日傘にして咲いていたチゴユリ。きっと、強い日差しが苦手なのでしょう。花たちのおかげで、摺針峠にはあっという間に着きました。道標に「笹子駅 約2時間」「御坂町三ツ星 約1時間」とあります。サブルート、エスケープルートとして覚えておきましょう。

段落見出し大洞山とカヤノキビラノ頭

摺針峠からは、三ツ峠山、大沢山、本社ヶ丸、鶴ヶ鳥屋山と並ぶパノラマを望めました。今回の山歩きでは、これらの峰々と足跡をつなぐのも目的の一つです。予定している笹子峠までは、まだ長い道程なので、あまりのんびりとはしていられません。少し足を速めて、大洞山に到着しました。山頂は樹木に囲まれて、ほとんど展望は利きません。それでも富士山はまだくっきりと見えました。水分補給をします。これで本日の消費は1リットルになりました。

この頃から、最終バスに間に合うか、微妙になりました。道草を慎んで、先を急ぎます。スタコラサッサと歩いて、順調にカヤノキビラノ頭に到着。ここできょう初めて人と出合いました。笹子駅で同じ電車を下りた、熟年の単独男性です。この方は、トクモリ南尾根を登り、これから摺針峠まで行って、新田に下りるとのことでした。私の方は、目指す笹子峠まで、約1時間30分と道標に書いてあります。このとき14時10分。新田16時45分発の終バスに間に合うでしょうか。

カヤノキビラノ頭を発って5分ほどで、また素晴らしい展望地がありました。奥秩父に加え、大菩薩嶺から滝子山までの連嶺を一望できます。その稜線は右端近くで左手前に折り返し、お坊山、トクモリを経て、笹子雁ヶ腹摺山までひと続きです。しばらく時間を忘れ、見とれていました。バスに乗れなければ、新中橋から笹子駅まで、国道20号を30分、我慢して歩くだけのことです。

段落見出し道間違い!

カヤノキビラノ頭から40分、中尾根の頭頂に到着しました。ベンチに腰を下ろし、お茶を飲みます。ここで私は現在地を、その北方にある1278m峰と勘違いしていました。地形図とコンパスではなく、カヤノキビラノ頭から要した時間で判断し、標識類のない中尾根の頭頂で右折してしまいました。1247m峰付近で間違いに気づき、本当は戻るべきでしたが、ジュースの缶や錆びた放置ワイヤ、鋸で切られた枝などを見て、「人間の活動圏内だから大丈夫だ」と思いました。

下った尾根のところどころに赤い小杭がありましたが、何の杭かは分りません。尾根を下り切ると、侘し気な林道に降り立ちました。その林道を下って行くと、青いゲートがあり、笹子隧道に通じる県道212号に出ました。新田沢に架かる橋のたもとです。県道を元気よく新田へと下って行くと「国道まで1.7km」と書かれていました。道を間違えて、ずいぶんと近道をしたことになります。最短の径路だったかも知れません。結果的に、バスには悠々と間に合いました。

761m点で左折し、北東に真っ直ぐ下る坂道に入りました。行く手に新田下バス停が見えます。見上げるトクモリ、お坊山、東峰の三峰がまた麗しく、振り返ればどっしりした大沢山が「また来いよ!」と見送ってくれているようでした。バス停に立っていると、新田行きのバスが来て停車しました。運転手さんが顔を出します。すごく優しい声で「回って来ますので、ここでお待ちになっていてください。」―「はい、待っています!」― きょうも無事で、本当に感謝です。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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