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奥武蔵の山上集落(初秋編)

奥武蔵山上集落

顔振峠付近より望む、風影の集落

八徳(やっとく)、風影(ふかげ)、ユガテなど、奥武蔵に点在する山上集落は、山道や林道で横に結ばれているとともに、それぞれが鉄道の駅と縦に結ばれています。地図を眺めて、思い思いのハイキングコースを考えれば楽しいでしょう。

地図 地理院地図: 八徳 , ユガテ , 顔振峠

天気 奥武蔵の天気: 毛呂山町 , 越生町 , 吾野駅 , 顔振峠

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コース & タイム 鉄道駅 吾野駅 8:22 --- 9:06 石地蔵 9:06 --- 9:40 八徳(最初の民家)9:41 ---(八徳散策)--- 10:04 山道入口の石段 10:07 --- 10:49 風影(最初の民家)11:00 --- 11:16 風影郵便ポスト 11:16 --- 11:38 摩利支天 11:44 --- 11:47 顔振峠 11:56 --- 12:14 諏訪神社(鉄塔散策)12:35 --- 12:49 越上山 12:57 --- 13:22 一本杉峠 13:24 --- 13:35 獅子ヶ滝分岐 13:35 --- 13:50 裸地(展望地)13:53 --- 14:20 エビガ坂 14:20 --- 14:34 ユガテ 14:58 --- 15:14 橋本山 15:21 --- 15:51 福徳寺 15:59 --- 16:08 東吾野駅 鉄道駅 16:16
※歩行時間には道草と撮影の時間が含まれています。
単独 2018.09.18 全 7時間46分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

9月18日(火)、一年ぶりに奥武蔵の山上集落を訪ねました。今年はなかなか秋晴れの日がなく、ぼやぼやしていると、ヒガンバナが終わってしまいそう。そこで、必ずしも好天というわけではありませんでしたが、思い切ってこの日、三つの山上集落を巡ることにしたものです。午前中は晴れていましたが、昼頃から曇天、ついには雨も降り始めましたが、最後は再び青空が戻り、娘心ならぬ「秋の空」を知る一日になりました。

段落見出し吾野駅から八徳入へ

東飯能駅から乗った西武秩父行き電車は、高麗(こま)駅で大部分の乗客を降ろし、車内はガラガラになりました。今、巾着田の曼珠沙華が見頃だそうです。私は7年前に一度見に行き、不整脈が頻発して懲りたので、もう行きません。大体私は、これ見よがしに植えられた、辺り一面の花よりも、同じ花でも、道端にさり気なく咲いている花の方が好きです。撮影するにしても、花そのものより、風景の中の花、人と花、虫と花などの方が、絵としてはずっと素敵だと思います。

吾野駅からは、はじめ顔振峠と同じ方向に進みます。午前8時半過ぎ、西川小学校の前を歩きながら、校庭に並んだ生徒数の少なさを見て、将来どうなってしまうのだろう?と心配になりました。坂道を下って高麗川の支流に架かる橋を渡り、うっかり右に進んでしまいましたが、すぐに気が付いてUターン。その土手に咲く真っ赤なヒガンバナに、青光りのする黒いアゲハチョウ。尾がないので、ナガサキアゲハのオスです。この後も何度か、ナガサキアゲハを見ました。

川の上流に向かって、民家の点在するのどかな田舎道を歩いて行きます。川のせせらぎが耳に心地よく、見ると、小さな魚たちが泳いでいました。道端のヒガンバナ、庭先のコスモスなども目を癒してくれます。やがて前方にY字路が見え、その真ん中にお地蔵様が立っていました。八徳(1.4km)を指す道標に従い、右に進みます。ここからは「八徳入」と呼ばれる美しい沢に沿う道。流れを伝わる風が涼しく、傾斜は緩やかで、足が軽やかに前に出て行きます。

段落見出し八徳

八徳の集落に近づくと、川が和風庭園の趣になりました。まるで庭師が造ったみたいですが、自然の造形なのでしょう。好奇心で川に架かる橋を渡ってみると、きれいな緑の苔に覆われた坂道が、緩く曲がりながら、上の方へと続いていました。元の道を三叉路まで戻り、道標が顔振峠を指す方向に進みます。この道の左右には、バショウの大きな葉がワサワサとして、バナナにそっくりです。昨年も撮ったシュウカイドウの咲く坂道を上りきると、展望の道になりました。

八徳は、奥武蔵の山上集落の一つ。家屋は明るく開けた斜面上に建てられています。澄んだ空気に満ち、美しい山なみを望む、まるで童謡のような道を、昨年はただ「素敵な村だなあ」と思って歩きました。でも今年の夏、西日本の豪雨や、北海道の大地震による厚真町の山崩れ災害を思い、心配も湧き上がって来ます。八徳の人々も深刻な思いで、減災のための対策に取り組んでいることでしょう。どうか皆様、いつまでも村ごと無事でありますように!

顔振峠への山道を右に分け、車道を少し登り、展望の優れた場所に行きました。と言っても、どなたかの家の前です。人の姿が見えなかったので、わざわざ挨拶には行きませんでしたが、遠慮しつつ、展望を楽しませていただきました。目の前の斜面は、野菜や花を作る畑。その向うに、山々が幾重にもV字状に重なって、果てしない奥行きを思わせる風景。こんなところに生まれ育った人は「ここには何もない」と言ったりもしますが、もちろん、かけがえのない故郷です。

段落見出し風影

まだ先が長いので、次に進みます。先ほど見送った、顔振峠への山道に入り、行動食を口に放り込みました。きょうは立ち止まる回数がとても多くなると予想したので、昼食はありません。パンとケーキの中間のようなお菓子と、凍らせた飲み物とを多めに持って来ました。ここから今日初めての山道です。あまり日が差さないせいか、土がしっとり湿っていて、色々なキノコが見られました。一旦下って、登って、顔振峠への道を左に分けると、まもなく風影です。

風影には、ひょっこり飛び出すように到着。元養蚕農家らしい大きな家があり、その庭から始まる小道に、ヒガンバナがほどよく咲いていました。南斜面は緑地で、果樹などが植えられています。家から草刈機を持った男性が出て来ました。私はここでは珍しい人。どこから来たかとか、朝早かったんでしょうとか、巾着田は混んでいたかとか、大体お決まりの雑談をします。きょうは共同の草刈り日らしく、男性の皆さん草刈機を肩に掛け、バリバリ刈って行かれました。

広い道路に下りて、顔振峠へと登ります。車道ですが、コスモス、萩、紅白のミズヒキなど、季節の花や虫が見られて、飽きることがありません。小さな郵便ポストがあったので、はがきを1枚持って来ればよかったと思いました。近くに郵便局や商店はありません。消印に「風影」の文字が入るとうれしいのですが、ちょっと無理でしょうか。やがて車道が「関東ふれあいの道」と交差し、この山道を少し登ると、摩利支天に至りました。ここでもう一度、風影を望めます。

段落見出しユガテへの長い道

さて、顔振峠に着いた時点では、顔を振って眺めたいほどの眺望はありませんでした。奥多摩から武甲山まで、どんよりと雲が被さっています。その上ほとんど無風だったので、爆走して来たバイクの排気ガスを吸う羽目に。これはいかん!首を左右に振り、急いで諏訪神社に移動します。閑静な神域でほっと一息つきました。この神社の狛犬は角が取れ、長い風雪を想わせます。風水害、地震、火災などに耐え、何百年か、変わることなく務めを果たしてきたのでしょう。

少し話を端折ります。阿寺では、送電線のない鉄塔まで往復しました。その後に立ち寄った越上山は、特に思い入れがない限り、一度行っておけば十分かも。山道と林道とは、ほぼ並行し、両者は所々で接続します。例えば、一本杉峠の近く、獅子ヶ滝への分岐点、「十二曲」と落書きのある道標の近くなどで、乗り換えが可能です。私はずっと山道を歩いたのですが、次回からは、わざわざアップダウンの多い山道を歩くほどのこともないかな、と思いました。

段落見出しユガテ

エビガ坂まで10分ほどの所で、山道に光が差し込みました。見上げると、空の一部が晴れ、太陽が輝いています。よし、陽の射すうちにユガテに行こう、とギヤを上げました。ところがエビガ坂と書かれた場所を過ぎ、まもなくユガテに到着と言うところで、再び曇ってしまいました。でもまた晴れるかも知れません。ユガテに着くと、道標の指す先に、学校の正門にあるような石の門構えがありました。ここからコンクリート道を下って行ったのですが ...

間違いなくユガテに到着したものの、その道は行き止まり、どなたかの家に入る道でした。急いで引き返します。先ほどの道標をよく見ると、腕木の指す方向ではなく、道標の直下に抜け道のようなものがありました。ここを下ってみましょう。すると細い道が民家の裏庭を回り込み、畑の向うへと通じていました。畑道には赤と白のヒガンバナ。簡素な手作りのフェンスで仕切った畑地には、若い秋冬野菜が伸び始め、トウモロコシの株や素朴な案山子が突っ立っています。

ベンチが幾つか置かれた緑地がありました。「ユガテ 290M」と書かれた名札が立っています。ちなみに東吾野駅の標高は約130m。これなら気軽に登って来れそうな標高差です。ユガテは、深い山奥の秘境ではありません。むしろハイキングの人気スポットです。私はしばらく、誰もいない畑の周辺を歩いてみました。もう日は差しそうにありません。よし、桜の咲く季節にでもまた来よう。きょうは来れただけでも十分によかった。

段落見出し東吾野駅へ

ユガテから東飯能駅への道は、二通りあります。山道を歩くか、林道を下るか、十字路でちょっと考えましたが、「飛脚道」の案内図を見て、山道に決めました。山道はアップダウンがあり、所要時間も少し長くなります。まず炭焼き窯ときのこ園の前を過ぎて、1人が通れるだけの狭い山道に入りました。地図に名前のない「橋本山」と言う小峰があるので、寄って行きましょう。「男坂」をわずかに登ると、難なく登頂できました。晴天の日には、眺望が好さそうです。

この後は、下るばかりです。「雨乞塚」はパス。ところが、ここで雨がパラパラと降って来ました。少し急ぎます。吾那神社と福徳寺の分かれ道では福徳寺を選択。すると雨が上がり、また日が差してきました。そして下り立った福徳寺には、きれいなトイレと、水道蛇口がありました。うれしいことに、石けんまで備えてあります。この水で手と顔を洗ったのは、言うまでもありません。本堂と阿弥陀堂の上には、きれいな青空も出てきました。

福徳寺の入口に立札があり、「飛脚道は地主さんの好意で整備することができ、復活した」ということが書かれていました。これより車道を10分ほど歩けば、東吾野駅です。こうして今回も無事に下山できたことを感謝しながら、こじんまりとした東吾野駅にゴールインしました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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