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入笠山

入笠山のすずらん

入笠山のすずらん

入笠山では、高原や湿原に自生する山野草を、きわめて手軽に見ることができます。入笠山に行くときは、季節の花を、事前に調べておくことをお奨めします。

タクシー 富士見駅 → 富士見パノラマリゾート
ゴンドラ  ゴンドラ山麓駅 ⇔ ゴンドラ山頂駅 登山口

地図 地理院地図: 入笠山

天気 入笠山の天気: 富士見町 , 富士見パノラマスキー場 , 入笠山

花 季節の花(富士見パノラマリゾート)


コース & タイム 鉄道駅 富士見駅 タクシー 9:20 --- 9:26 富士見パノラマリゾート(ゴンドラチケット購入)9:30 --- 9:35 ゴンドラ山麓駅 ゴンドラ 9:36 == 9:51 ゴンドラ山頂駅 9:52 --- 9:52 入笠すずらん山野草公園 9:57 --- 9:57 釜無ホテイアツモリソウ実験園(登山開始)10:10 --- 10:17 入笠湿原 ---(湿原散策)--- 10:48 山彦荘 10:48 --- 10:49 トイレ(蛾を撮影)10:56 --- 11:06 花畑下ゲート 11:06 ---(ジグザグ道で花の観察)--- 11:24 花畑上ゲート 11:24 --- 11:48 入笠山 12:04 --- 12:18 首切登山口 12:18 --- 12:32 大阿原湿原入口 12:34 ---(木道)--- 12:51 テイ沢分岐 12:55 ---(桟道)--- 13:11 大阿原湿原入口 13:12 --- 13:32 八ヶ岳ビューポイント 13:34 --- 13:57 山彦荘 ---(湿原散策)---すずらん自生地最上部 14:19 --- 14:25 入笠すずらん山野草公園(登山終了)14:42 --- 14:48 入笠湿原(撮影)15:08 --- 15:24 ソフトクリーム売店 15:33 ---(入笠すずらん山野草公園散策)--- 15:55 ゴンドラ山頂駅 ゴンドラ 15:59 == 16:14 ゴンドラ山麓駅 16:14 --- 16:19 富士見パノラマリゾート 16:25 --- 17:12 富士見駅 鉄道駅
※歩行時間には撮影の時間が多く含まれています。
入笠山 にゅうかさやま:標高 1955.4m 単独 2019年6月25日 周回時間4時間15分+延長路程1時間13分+富士見駅へ徒歩47分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:

6月25日(火)梅雨の晴れ間、入笠山に行ってきました。ロープウェイで標高1780mの山頂駅まで楽チンに上れてしまう山ですが、目的は花を見ること。限られた時間の中で、すずらんの大群落、色鮮やかなレンゲツツジ、白いズミ、水辺のクリンソウ、保護下のホテイアツモリソウほか、たくさんの山野草を見ることができました。予定した時刻に出発地点に戻ったのですが、まだ不完全燃焼。この素晴らしい日、シャトルバスはあきらめ、もう一度湿原に行ってきました。

段落見出し 富士見町へ

前日に見た25日の予想天気図は、梅雨時としては理想的。来月からしばらく海外出張なので、この機会にと、少し遠出することにしました。そこで選んだのが、すずらんとホテイアツモリソウが見られる入笠山。すずらんは他の山でも見られますが、大群落を見てみたい。ホテイアツモリソウは、長野県で唯一生き残っているのが富士見町。かつて富士見町では、どこでも普通に見られたそうですが、乱獲で激減し、今は保護地でしか見られないそうです。

さて、富士見駅からシャトルバスとロープウェイを乗り継いで往復する場合、山上での滞在時間は4時間程度しかありません。いつものように花と虫で道草を食い過ぎないよう、テキパキと行きましょう。6時35分、八王子始発の松本行き各駅停車に乗りました。あずさ3号よりも30分ほど早く、富士見駅に着きます。早朝から重苦しい曇天で、「きょうはハズレかな?」とも思ったのですが、笹子トンネルを出ると、そこは別世界。まぶしいばかりの青空が待っていました。

素晴らしい晴天ですが、南アルプスは雲がかかり、どこがどこなのか分かりません。地蔵岳や甲斐駒など、特徴のある峰が見えないのです。やはり梅雨時、いくら晴れても、湿度は高いのでしょう。9時10分、時刻表通りに富士見駅に到着しました。昭和の味わいが残るプラットフォームと駅舎。駅正面のバス乗り場に行きます。二人のご婦人に誘われて、10時発のシャトルバスを待たず、タクシーに相乗りしました。片道1500円÷3です。これで40分の時間を稼げました。

段落見出し ゴンドラ(ロープウェイ)で山上へ

タクシーの運転士さんの話では、昨24日は富士見町で雨と雹が降ったそうです。それでも10名ほどがシャトルバスに乗って行ったそうで、さすがは花の入笠山。山麓への途中、歩いているハイカーを見ましたが、徒歩で約40分かかるそうです。このことを聞いておいたことが、後に役立ちました。約6分で「富士見パノラマリゾートに到着」、まずはゴンドラのチケットを購入します。同乗して来たご婦人たちが、200円引きの割引券を持っていて、私も特典に与りました。

ゴンドラの往復チケットを買うと、「入笠に咲く花」という役に立つ小冊子がもらえるほか、ソフトクリームの割引券、山野草苗の引換券、「また来てねチケット」が付いています。何も持たずに来た人は、駅前の観光案内所で、割引券が付いたハイキング案内パンフレットをもらえるそうです。それもない人は、ネット上でも割引券が入手できるので、道すがら準備しましょう。気分よくチケットを手にし、緑の濃い山を見上げながら、ゴンドラ山麓駅まで5分ほど歩きます。

ゴンドラは8人乗りですが、まだ乗客がほとんどいなかったせいか、「お一人様」で乗せてくれました。何とも豪華!VIP待遇の気分です。ゴンドラはぐんぐん上昇。後の窓から八ヶ岳を一望できます。そのように設計したのでしょう。左右の小窓から、山の美味しい空気が流れ込んできました。山頂駅まで、750mの高低差を約15分で昇ります。たくさんのゴンドラが行き交うのを見ていたら、ピンクのゴンドラは、自分が乗っている1台しかないことに気づきました。

段落見出し 花いっぱいで、足が進まない

ゴンドラ山頂駅を出ると、もう「入笠すずらん山野草公園」です。いきなりベニサラサドウダンに捕まりました。植栽だと思いますが、めったに見られないし、今完璧な美しさ。足が止まります。すると、釜無ホテイアツモリソウの赤紫色が目に入りました。保護柵の中で咲いています。何株あるでしょうか、みんなお腹ぷっくりの布袋様。柵の外にはマイヅルソウの大群落。とてつもない数の花が咲いています。先々週行った雛鶴神社に分けてあげたいくらい。ふう!

クマガイソウは終わり、花ガラになっていました。この花は、高尾山の秘密の自生地と、家の近くの公園でも見られるので、まあ大丈夫です。ニッコウキスゲは咲き始めで初々しい。ああ、早くも稼いだ時間の半分を使ってしまいました。入笠湿原に向かいます。エゾハルゼミの婚活の歌が賑やかな、カラマツ林の道を急ぎます。何度も出遭う色鮮やかな蝶は、ヤマキマダラヒカゲ。翅を閉じると保護色になります。林道を横断し、鹿止めのゲートを通過し、湿原に入りました。

たちまち心を躍らせてくれたのは、朱色のレンゲツツジ。ここかしこで、きれいに咲いています。まだつぼみばかりの株もあり、来月初めまでは楽しめそう。目線を下ろすと、逞しそうなシロバナノヘビイチゴ。一つ一つの花が大きく、しかもたくさんあります。ウマノアシガタの群落は、緑の湿原に金粉を撒き散らしたよう。湿原中央部で輝いています。北側の木陰に行くと、クリンソウが群生していました。この車輪咲きの赤い素朴な花は、昔から好きな野花の一つです。

段落見出し すずらん、りんりん

湿原の南東面に、スキーのゲレンデのような斜面があり、一面が優しい緑色に覆われています。すずらんの自生地で、その数、100万本! 可愛らしい花が、葉の影に隠れています。腰を思い切り低くして、目を近づけましょう。見れば見るほどたくさんあります。耳を澄ませば、リンリンと鳴る鈴の音が、心の耳に聞こえるかも ...。ところで、ゴンドラ山頂駅から左の道に進むと、すずらん自生地の最上部に立ち、ドラマチックに入笠湿原を目にすることができそうです。

入笠湿原は、帰りにまた通過します。西の鹿ゲートから出て、山彦荘のとなりのトイレに行きました。実は、山彦荘の前に小さな花壇のような囲いがあり、釜無ホテイアツモリソウやキバナノアツモリソウなどが咲いていたのですが、この時は知りませんでした。で、トイレはきれいです。その外壁に蛾がたくさん止まっていたので、しばらく撮影三昧となりました。1種だけ掲載します。花の好きな人は幸せ、虫の好きな人も幸せ、どちらも好きな人は、とても幸せ!かな。

道草を食いました。入笠山頂に向かいます。カラマツ林の道を行くと、サルオガセがありました。一見とろろ昆布のように見える地衣類ですが、見ようによって、寂寥、幽玄、平安などを感じることがあります。今回ズームインして見たら、意外ときれいな植物かもしれないと思いました。小さな沢沿いの道を進むと、初めて見るズダヤクシュ、久々に見るサンリンソウの花。時間は気になりますが、素通りはできません。後悔のない時間を生きるための葛藤。大げさかな?

段落見出し 「花畑」という名のお花畑

小さなせせらぎの傍らに、数株のクリンソウが見られました。大菩薩連嶺でもよく見られる風景です。ところが、その少し先に、クリンソウの著しく密集した群落がありました。花も朱色と赤紫の2色。真っ直ぐに立つ細い茎の頂点にパっと広がる花は、さながら花火のようです。どうして、ここに、このような高密度で群生するのか、その訳を知りたいと思いました。すぐ上方に林道を挟んで、元はスキーのゲレンデだった、緑の鮮やかな草原、「花畑」があります。

ところで入笠エリヤでは、「花畑」も「入笠山登山口」も、固有名詞(地名)です。林道に出たら「入笠山登山口」を経て「花畑」の西縁を直登することもできますが、私は鹿ゲートを通って、「花畑」のジグザグ道に入りました。「入笠湿原」と同様、植生保護柵で囲まれた「花畑」内のレンゲツツジは、ニホンジカによる食害から守られ、小群落がいくつもあります。このお花畑には、すずらん、ツマトリソウ、オオヤマフスマなど、小さな花もたくさん見られました。

「花畑」の道では、レンゲツツジと袖を触れ合うほど接近します。花の色も、黄橙から朱色まで個体差があるのは、実生の野生ツツジだからでしょう。小さなすずらんの花は、湿原よりも「花畑」での方が見やすく、撮影向きだと思います。最上部のジグザグを折り返すと、蓼科山がよく見えました。そして「花畑」の道が登山路と合流。アズキナシとズミとが競うように咲いていますが、ここのズミは既に終盤。美しいズミは、後ほど大阿原湿原で見ることになります。

段落見出し 入笠山頂へ

登山道を10分ほど登ると、「岩場コース」と「岩場迂回コース」に分かれました。見ていると、ほとんどの人が「岩場コース」に進んでいます。私もそうしましたが、手を使って登るような岩場ではなく、普通の登山道でした。もしスニーカーや運動靴で登り、岩が滑りやすいと思ったら、下りは「岩場迂回コース」がいいでしょう。この分岐から約10分登ると、山頂に至りました。山頂標は、「入笠山山頂」ではなく、「入笠山頂」。開放感十分の、素晴らしい山頂です。

観光資料によると、入笠山頂は360度の大展望があり、深田百名山の22座が見えるのだとか。山が見えるか雲が見えるかを問わなければ、360度の展望は本当です。この日も、眼前に八ヶ岳を一望し、西面に御嶽山と乗鞍岳を望めました。富士山、南・北・中央アルプスは、雲に隠され残念。岩のひとつに腰を下ろし、八ヶ岳を眺めながら、おやつと冷たい飲み物で小休止しました。三角点石の長い根が露出しています。山頂は徐々に低くなってしまうのでしょうか?

鳳凰三山、甲斐駒、仙丈ヶ岳を見たかったのですが、雲が離れそうもなかったので、早めに山頂を辞し、大阿原湿原に向かいました。15分ほどで、林道に下り立ちます。道標を見て「首切登山道」を下りて来たことを知りました。よくできた道標で、すずらんのイラスト、きれいな書体、自然と調和するデザインで、ハイキングコースの各要所に立っています。さらに林道をテクテク15分ほどで、大阿原湿原に到着しました。周回コース30分と書いてあります。

段落見出し 大阿原湿原うるわし

入口から展望台までの150m区間は、車いすも通れるバリアフリーの桟道です。そこはズミの花道で、白い花弁が道いっぱいに撒かれていました。展望台からは、奥行き感のある湿原を望めます。白い雲の浮かぶ青空の下、静かな水の流れる緑の湿原。花盛りのズミや、姿の整ったカラマツなどの樹木が散在し、どこかでカッコウの鳴く声が聞こえます。「散策ガイドブック」によると、ここは3万年前に形成された高層湿原で、南アルプスでは極めて珍しいものだそうです。

入笠湿原は、山の中に隠された秘密の花園。大阿原湿原は、のどかな桃源郷の趣。入笠山の二つの宝物を知りました。さて、展望台の先には木道が続きます。鮮やかな花こそありませんが、草や苔に湿原ならではの味わいがあり、蝶もたくさんいます。ここのクリンソウは、まだつぼみ。ズミは満開を少し過ぎたでしょうか。でも僅かながら、桜色のつぼみもありました。テイ沢は静かなせせらぎ。青草や苔の生した大小の岩。その合間に咲く白い花は、サンリンソウです。

私は周回コースを反時計回りに歩いています。テイ沢分岐がその中間点で、沢の小橋を渡ると、遊歩道の様相が一変しました。前半は明るい湿原を貫く木道でしたが、後半は湿原と交わる森の中の桟道です。老年期の湿原に樹木が侵入して行く前線と言えるかも知れません。草原は見えにくくなりましたが、湿地の自然林を間近に観察できます。日光が差し込むので決して暗くはなく、桟道には蝶の集団が各所に見られました。人が通ると一斉に舞い上がり、乱舞します。

段落見出し 再び、三たび、入笠湿原へ

大阿原湿原を一巡りし、入口に戻りました。時刻は13時11分、シャトルバスに乗るまでの時間を見計らうと、そろそろゴンドラ山頂駅へ戻らねばなりません。再びカラマツの林道をテクテク、山野草の花を探しながら歩きました。中間地点に「八ヶ岳ビューポイント」があります。うれしいことに、編笠山から蓼科山までの稜線を、雲に邪魔されることなく、きょう初めてくっきりと望めました。ここはベンチもあって、時間があれば、ゆっくりして行きたいところです。

「花畑」入口から入笠湿原までは、往路と同じ道です。お花畑のレンゲツツジ、群生するクリンソウ、100万本のすずらんなどを、もう一度見られるのが嬉しいところ。入笠湿原の中央の十字路から、すずらんの自生地を貫く木段を登ります。美しい湿原を振り返り、振り返り、左右のすずらんを愛でながら登りました。ここを歩かずには帰れません。登りきるとカラマツ林を抜け、電波塔の横を通って、朝の出発地に戻りました。このとき14時25分、計画通りです。

さて、このままゴンドラとシャトルバスに乗って帰るべきでしょうか? この素晴らしい日に、素晴らしい場所にいる今、幕を引くのはあまりに惜しい。撮影したい花も、たくさん残っています。「後悔のない時間を生きる」ために、もう一度入笠湿原を訪れ、なおゆとりがあれば、「入笠すずらん山野草公園」を巡ることにしましょう。足も、もっと歩きたがっています。リュックを背負い直すと、子供が遊園地に駆け出すときのように、足が元気よく動き出しました。

段落見出し 心満たされて家路に

以後の話は端折ります。1時間余りの延長路程で、多くの花を撮影し、ルバーブソフトクリームを食べ、「恋人の聖地」を訪れました。15時59分、再びゴンドラに「お一人様」で搭乗し、「動く展望台」から八ヶ岳の眺望を満喫。おしぼりのサービスもあります。山麓に着くと、売店で山野草の苗をもらいました。選んだのはアサギリソウ。バス乗り場で、富士見駅への道順を教わりました。ていねいに教えてくれましたが、難しくはありません。しかも下り基調で楽な道です。

その方によると、駅までゆっくり歩いて1時間程だとのこと。朝のタクシーでの話と合わせ、40~60分で行けそうです。知らない町や村を歩くのは、興味深く、楽しいもの。風景や路傍の花、庭の花などを楽しみながら、飽きることなく富士見駅に到着しました。その後一人また一人と、山野草の苗を持ったハイカーが到着しましたが、最終ゴンドラに乗って来た人もいたようです。私を含めて6人が、18時01分発のあずさ30号に乗りました。無事に家路に就けて、感謝です。

段落見出し あと書き

入笠山の花を見ると、高山植物というよりは、高原の花です。加えて、アヤメ、クリンソウ、ササバギンランなど、都市部の公園でも見られる花が多くあります。それを、わざわざ高い山に登ってまでも見に行き、見てうれしいのは、また新しい感情が湧き起こるからではないでしょうか。では、見なれた愛する人と、高い山に登って見つめ合うとどうでしょうか? 今回入笠湿原で、杖を突きながらゆっくりと散策する老夫婦を何組か見て、そんなことを考えてみました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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