山はいいなあ  >  丹沢・道志  >  マルガヤ尾根~鍋割山

マルガヤ尾根~鍋割山

マルガヤ尾根より、富士山と鍋割山南稜を望む

マルガヤ尾根に、踏み跡はありますが、登山道も道標もありません。尾根をひたすら忠実に歩くルートです。下りは上りよりも難度が高いとされています。

バス停 神奈中バス: 渋沢駅 ⇔ 大倉 登山口

地図 地理院地図: マルガヤ尾根928m峰 , 歩行ルート図

天気 マルガヤ尾根の天気: 神奈川県秦野市 , 鍋割山

関連記事 レポ: 鍋割山稜 , 鍋割山


コース & タイム 鉄道駅 渋沢駅 バス停 6:48 == 7:02 大倉 7:07 --- 8:18 二俣 8:18 --- 8:39 マルガヤ尾根取り付き 8:46 --- 9:33 マルガヤ尾根928m峰 9:45 --- 11:04 鍋割山稜出合 11:04 --- 11:27 鍋割山 11:53 --- 12:49 後沢乗越 12:53 --- 13:13 ミズヒ沢 13:13 --- 13:33 二俣 13:33 --- 14:38 大倉バス停 バス停 14:52 == 渋沢駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と撮影の時間が含まれています。
鍋割山 なべわりやま:標高 1272.5m 単独 2020.11.5 全 7時間31分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

11月5日(木)、絶好の晴天日、丹沢のマイナールートの一つ、マルガヤ尾根を登りました。紅葉・黄葉のグラデーションが美しくなるのを見計らって計画したものです。予想は当たり、期待を越えて秋山の光彩を楽しむことができました。加えて、各所で見られた冠雪の富士山が感動を増幅。また鍋割山から後沢乗越への下り道も同様に、ふと見上げるたび、紅いカエデ・緑のモミジに目を奪われました。終日高揚感をもって歩いたので、最後まで疲れませんでした。

段落見出し大倉からマルガヤ尾根へ

今回マルガヤ尾根ルートを選んだ主目的は、山行の自粛で弱った足腰の筋トレです。やろうとすれば自宅でもできるのですが、面白味がないと長続きしません。山で使う筋肉を鍛えるには、やはり山歩きが一番。どうせなら、山の美しい時に行きたい。という訳で、近場でしかも未踏ルートであったマルガヤ尾根を選びました。新型コロナウイルス禍は未だ終息していませんが、世の中は GoTo トラベルを積極的に推進中。ならば私は GoTo マウンテンで健康維持を図ります。

渋沢駅で、大倉ゆき一番バスに乗りました。絶好の秋晴れが約束されたこの日、登山客が大勢乗り、バスはほぼ満員。車内で私はできるだけ前に進み、立ちました。大倉に到着すると、他の人々に先駆けてトイレを済ませ、表丹沢専用の登山届用紙に記入し、マルガヤ尾根の線を1本引いて提出。さっそく二俣方面に向かいます。農道に出ると、大山から塔ノ岳まで、表丹沢の峰々をくっきりと望めました。山腹の紅葉も進んでいる模様。私の足もすこぶる軽快です。

話を端折り、大倉から林道を歩くこと1時間10分で二俣に到着。さらに20分かけて、勘七ノ沢と本沢を越えた先の小広場が、マルガヤ尾根の取り付きです。そこの切り株にリュックを下ろし、準備運動を念入りにしました。実はきょう、携帯を家に忘れてくるというウルトラ阿呆をしでかした私。GPSは使えません。でも「東丹沢登山詳細図」を持っています。通りかかった熟年紳士が、地図を広げている私を見て「登りは全然問題ありません」と笑顔で言ってくれました。

段落見出しマルガヤ尾根を登る

マルガヤ尾根は、下りでのルートファインディングが要注意だと言われます。鍋割山稜におけるエスケープルートの選択肢には入りません。でも私は登るだけ。ひたすら頑張りさえすれば踏破できるので、その意味では気楽です。小広場から少しだけ奥に行くと、分かりやすい踏み跡がありました。さっそく登っていきます。退屈な西山林道とは異なり、高度をぐんぐん稼げるのが爽快です。キッコウハグマの花を見つけ、山から祝福されているような気分にもなりました。

踏み跡は、ずっと続いていました。おかげで省エネモードで登れます。25分ほど登ると、カシノナガキクイムシの被害樹が数本ありました。「かしながホイホイ」という捕虫紙が巻かれています。ここにそれを書く理由は、大倉からここまでが頑張りの道、ここから先が喜びの道だったからです。「おつかれ様、さあ明るい広葉樹の別世界へどうぞ!」とは想像の山の声。木々の葉は、潤いの緑から鮮やかな朱色まで取り揃え、山の住人(樹木)総出で芸術祭の真っ最中です。

1週間前に大持山を歩いたときのように、「晩秋の頃」のメロディーが脳内を流れ始めます。♪ 茜や金色 落ち葉の道 ♪ いや、落ち葉になるのは、もう少し先でしょう。今ここでは、萌える葉(各種モミジ)、燃える葉(コハウチワカエデなど)が楽し気に大空を飾っています。空の青と雲の白がスクリーン、地面の褐色が舞台。その奥行きは深く、しかも輝いています。絵のように美しく、歌のように心をとらえる、きょうの山。やがてあでやかな赤一色になるのでしょうか?

段落見出しマルガヤ尾根928m峰とその先へ

マルガヤ尾根の中腹、ふっくらと盛り上がった小山に到りました。ここは標高は928m、四十八瀬川の広い川原からも見える丸い峰です。マルガヤ尾根取り付き点の標高は約640m、マルガヤ尾根最高点の標高は約1300m。標高差で言えば、マルガヤ尾根を半分登ったことになります。小休止していきましょう。立ったまま、温かいミルク紅茶とおやつでエネルギー補給を済ませます。この先、小規模ながら岩稜・やせ尾根などもあるので、気を引き締めて進みましょう。

928m峰を後にして軽く下ると、尾根がやや狭まりました。登り返した先でアセビのトンネルを抜けます。進むにつれ、尾根が岩稜の様相を帯びてきました。ベル型の小さな青紫の花は、イワシャジン。岩の隙間に根を張って生きます。標高950mあたりから一層狭くなった尾根を、廊下を渡るように通過しますが、長くはありません。この頃、とても大きな雲が太陽光を遮り、せっかくの紅葉も光彩が半減しました。太陽の現れるのを待ち望みつつ、前に進みます。

その後20分余り経つと、まぶしい太陽が現れ、あらゆるものに再び輝きを与え始めました。空を見上げると、先ほどの大きな雲は消えてしまったようです。これより後、雲が太陽を隠すことは二度とありませんでした。そしてついに、待望の明るいカヤトに入ります。まず、前方に立つ美しい木が目に入ってきました。黄金色に茂った見事な枝っぷり。紅い葉も品良くちりばめられています。幹の傍らで見上げると、伸び上がる幹と枝々が天を賛美しているように思えました。

段落見出しマルガヤ尾根、圧巻のカヤト

あちらこちらでリンドウが咲いています。つぼみもたくさんあります。そして、何と言ってもカヤト最大の魅力は、光あふれる解放感と広大なパノラマ。東面には、マルガヤ尾根と並ぶ小丸尾根、長大な三ノ塔尾根をはじめ、幾重もの尾根が、南方に裾を引きます。西面には鍋割山南稜が豊かな山ひだを見せ、栗ノ木洞、櫟山へと続きます。遥か相模湾の沖には伊豆大島、その右に真鶴半島と伊豆半島。遠く天城山、明神ヶ岳、金時山、愛鷹山、そしてまだ姿を見せない富士山。

富士山は、最後に登場しました。地平線から昇る月が大きく見えるように、鍋割山南稜に頭を出した富士山の大きいことにびっくり。そしてマルガヤ尾根を登るほどに、富士山はどんどん競り上がり、ついに最も高くなってしまいました。「富士山、最高!」今そう思っている人が、たくさんの山に、たくさんいるに違いありません。そして「来てよかった!」とも。紅葉と展望と秀麗の富士、私はこの三つすべてを、今マルガヤ尾根で独り占めしています。「もったいない!」

踏み跡が極めて明瞭になりました。もはや、踏み跡と言うより、一般登山道なみです。鍋割山稜からこのカヤトだけを訪れる人々がいるのかもしれません。そうする価値を与え、増幅する主役は、やはり富士山。今望めば、甲相国境、西丹沢、鍋割山稜を前衛に従え、高く、厳かに、美しく聳え立つ、わが国随一の霊峰。人の魂を高揚する力も日本一の山。加えて、南アルプスの一部も見えてきました。北岳と間ノ岳、そして塩見岳。見れば胸の血が熱くなる峰々です。

段落見出し鍋割山へ

マルガヤ尾根を登りきり、鍋割山稜のメインルートに接続しました。きょうは左折し、鍋割山に向かいます。この稜線の紅葉はすでに終わり、枯葉と落ち葉になっていました。でも私の楽しみは、丹沢主稜の眺望。最高峰の蛭ヶ岳を中心に並び立つ主稜を、最も美しく望める展望地へと足が勝手に早まります。この道で、今朝マルガヤ尾根の取り付きで声をかけてくださった熟年男性と再開しました。相変わらず嬉しそうな声で「鍋割山の北尾根も面白いですよ」とのことです。

山は、登った分だけ下らなければなりません。また登るためです。だから「人生の縮図」だとも言えるのでしょう。ところが現在のユーシン方面は、下りたらどこかに登らなければなりません。健脚者だけが訪れる秘境になっています。もし玄倉林道が復旧すれば、いずれかの山と組み合わせて歩きたい、あの白い谷と青い水の道。それはいつになるでしょう? そのためには、健康で長生きしなくてはなりません。丹沢主稜の雄姿を望みながら、そんなことを想わされました。

鍋割山頂でも、すばらしい富士山を望めました。時刻は11時30分。富士山を見ながら休憩中の人、お弁当の人、うどんをすする人などいます。私の昼食は、リュックを軽くするために、菓子パンと熱いミルク紅茶とみかんが、秋冬の定番です。久しぶりに見る鍋割山荘には、ソーラーパネルが増え、きれいな「山岳公衆トイレ」ができていました。コロナ禍の現在、山荘は立入禁止で、うどん待ちの人は外に並びます。暖かな日差しと、穏やかな空気に包まれた山頂でした。

段落見出し下山

十分に満たされた心で、下山の途に就きました。鍋割山南尾根を、二俣へと下ります。この道は何度も歩きましたが、地図上のコースタイムで歩けたことがありません。原因は、疲労、泥濘、慎重な心、バスへの時間調整、等々です。ところが今回歩くと、とても歩きやすい道になっていました。美しい紅葉と左右の展望にも恵まれ、後沢乗越への下り道が短くなったような気がしたほどです。二俣への道もスムーズでした。梯子には頑丈そうな手すりも付けられていました。

マルガヤ尾根取り付きの小広場に戻りました。これより、今朝歩いた道を再び歩きます。本沢と勘七ノ沢を順次に木橋で越え、二俣に到着。ここから大倉までが長いのです。幾つもの尾根を巻いていく長ったらしい西山林道に、私は4箇所の通過ポイントを設定しました:尾関氏の胸像・表丹沢県民の森入口・黒龍の滝の上・お地蔵様の祠、です。5区間に分けられ、メリハリ効果で心理的に短くなります。平坦地では歩き、下り坂ではスロージョギングモードで走りました。

大倉の農道に戻り、明るい空の下に、表尾根、大山、風の吊橋、相模湾をまた目にします。今、充実感に満ちて、大倉バス停に向かう道は「お帰りなさい」の道。これまで、さまざまな情感を抱いて、あるいは疲労した足を引きずって、山から帰ってきたとき、いつでも優しく迎えてくれた道。時には、星が見えたこともあります。でもきょうの足は、最後まで軽快に動いてくれました。今回も無事に下山できて感謝です。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



©2020 Oda Family  All Rights Reserved.