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甲州高尾山

甲州高尾山東峰より南アルプスと甲府盆地を望む

甲州高尾山東峰より、南アルプスと甲府盆地を望む

甲州高尾山は、何度かの山火事により、特異的に好展望の山になりました。やがて若木が大きく育てば、展望は変わるかもしれません。

地図 地理院地図: 甲州高尾山 , ヤマレコルート図

天気 甲州高尾山の天気: 甲州市勝沼町 , 甲州高尾山


コース & タイム 鉄道駅 勝沼ぶどう郷駅 7:23 --- 7:58 大善寺 8:01 --- 8:39 送電鉄塔 8:48 --- 9:49 剣ヶ峰 9:51 --- 9:55 甲州高尾山 9:58--- 10:05 甲州高尾山東峰 10:11 --- 10:56 富士見台 11:17 --- 11:21 棚横手山鞍部 11:21 --- 11:45 甲斐御岳山展望台 11:46 --- 12:05 大滝不動尊 12:20 --- 12:42 三角点838m 12:42 --- 13:47 勝沼ぶどう郷駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と撮影の時間が含まれています。
甲州高尾山 こうしゅうたかおさん:標高 1106m 単独 2020年1月6日 全6時間24分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

1月6日(月)、7日間続いた好天の最終日、甲州高尾山に行ってきました。10年以上も前から行きたい山のリストに入っていたのですが、桜か桃の咲く季節に行きたいと思い、ずっと延び延びになっていた山です。花の季節になれば、また他の山に行くかも知れません。ならば甲州高尾山に優れた展望があるうちにと、思い切って行ってきました。そして期待通り、富士山と御坂山地をはじめ、南アルプス、八ヶ岳、奥秩父などの山々を広大に望むことができました。

段落見出し勝沼ぶどう郷駅のときめき

午前7時18分、勝沼ぶどう郷駅のプラットフォームに下り立つと、素晴らしいパノラマが待っていました。それは桜色に染まった冠雪の南アルプス。右手の甲斐駒ヶ岳から左手の聖岳まで、懐かしい峰々が機嫌よさそうに目覚めています。来てよかった! 見たかったものを見れて、もう山には登らなくてもいいような気さえします。これから山の稜線に立てば、どんな展望が得られるでしょうか? ただ南アルプス上空のうす雲が気になるので、道草を食わずに登りましょう。

大善寺を指す道標を見て、ぶどう畑の道を進みます。南アルプスと甲府盆地がほとんど丸見えのこの道は、遊歩道かフットパスに設定されているようで、次々と現れる道標にしたがって、迷いなく大善寺に至ることができました。年末年始の参拝客もひと段落ついたのか、今ひっそりとした境内に人の姿は見られません。この美しい寺院をゆっくりと拝観したい思いはありましたが、今は道草厳禁。Uターンして甲州高尾山登山口に向かいました。

国道20号をほんの少し行くと、登山口がありました。さっそく登り始めます。ところが1分ほど登ると、右手に「芭蕉翁甲斐塚」なるものがありました。「蛤の生ける甲斐あれ年の暮れ」芭蕉。私はこの句を知りませんでしたが、蛤(はまぐり)は今もおせち料理の人気食材です。いやいや、今度こそ道草を食うまいゾと決意して登って行くと、振り返りざまにスッキリきれいに晴れた南アルプスが見えました。やった! きょうはすてきな山歩きができそうです。

段落見出し急登も苦にならず

五所神社という小さな宮の右わきから山道に入ります。冬枯れの明るい山道には落ち葉がびっしりと堆積し、踏みしめて歩くとガサゴソと、やや湿った音がしました。右手にはこれから歩く稜線が望めますが、どれが何という峰か分かりません。五所神社から3分ほどで、有害獣対策の柵の扉を開けて通過し、きちんと閉じます。この先の尾根道には、多くの倒木がありました。昨年の台風によるものではなく、倒れてからかなり年月が経っているようです。

さて、ここはかなりの急登です。多少のジグザグはありますが、ほぼ直登する感じがします。しかも落ち葉が堆積しているので、下りに取る場合はスリップに気を使うことでしょう。でも登る私は、ひたすら頑張るだけのこと。丹沢大倉尾根の花立階段のように、素晴らしい景色が背中を押してくれます。もっともこの尾根には、足の疲れる階段はありません。そもそも低山なので、急登もすぐに終わります。ほどなく稜線に立つと、そこに送電鉄塔が立っていました。

鉄塔の下で小休止した後、楽しい稜線歩きに踏み出しました。冬枯れで明るく、なだらかで、梢越しに多くの山々を望める、すてきな尾根道です。右手前方には、三ツ峠~笹子雁ヶ腹摺山~お坊山~滝子山と連なる峰々。左手にはカラマツ林を透かして、奥秩父西部の山並みを望めました。行く手に現れるピラミッド形の峰を一つ越え、二つ目を越えようとすると、林道に出ました。細い無線通信アンテナが4本立っています。近づいてみると、消防無線の基地局でした。

段落見出し展望の尾根てくてく

地理院地図を見ると、宮宕山という表記があり、丹沢三峰のように三つの小峰が東西に並んでいます。消防無線基地局のすぐ先で西の峰に至ると、道標に「甲州高尾山剣ヶ峰」と書かれていました。三等三角点石がありますが、現在の展望は立ち木のために苦しくなっています。続いて中の峰に至ると、道標に「甲州高尾山山頂 標高1106m」と書いてありました。地理院地図では、この峰に1110mの閉じた等高線が描かれているので、標高値は検討の余地がありそうです。

最も優れた展望は、東の峰にありました。無名峰ですが、頂上に1120mの等高線の小円があります。つまり、山体を共有するこれら三峰の最高峰なのです。この峰に立つと、(時計回りに)富士山~南アルプス~八ヶ岳~奥秩父~南大菩薩連嶺~三ツ峠山をきれいに望めました。ただし、奥秩父方面だけは樹木の枝がうるさいです。暖かい日差しの下、風は緩く、夢を誘うような峰々が360度に展開する、このすてきな無名峰。しばし至福の時間が流れます。

後に勝沼ぶどう郷駅のプラットフォームに立って、甲州高尾山を望むと、中の峰が最も大きく見えました。東の峰はその向こうにほとんど隠されています。中の峰が「甲州高尾山山頂」の栄を担っているのは、こうした事情によるものかも知れません。ちなみに、その尾根続きである棚横手山は、大滝不動尊から下山して山麓から眺めたとき、甲州高尾山とは別の山という印象を受けました。今回パスした棚横手山は、いつか大滝山などと合わせて、歩きたいと思います。

段落見出しゆったり富士見台

次は富士見台に向かいます。東の峰からさらに東へと下って行くと、南面の林道に急接近しました。後に名を知ったのですが、「菱山深沢林道」です。先ほど消防無線基地局の前で横断したのもこの林道で、最後に大滝不動尊から延々と歩くことになるのもこの林道です。尾根道が鞍部に下りると、左に大滝不動尊への近道を分けました。ここの道標には微妙な落書きがあります。この鞍部から先へ登り返すと、1150m+の無名峰に至り、またまた素晴らしい展望がありました。

この無名峰では、樹木に邪魔されず、奥秩父の主脈とその南麓の山々をスッキリと望めました。甲州市や山梨市の扇状地とその家々も望め、人間の長い営みに想像をかきたてられます。もう富士見台は目と鼻の先。軽く下って、登り返し、富士見台に立ちました。富士山は、おそらく六号目あたりから上の部分が、胸像のように望めます。腰を下ろすのに都合の良いベンチや丸木などはありませんが、立ったまま大パノラマを眺めつつ、お茶とおやつにしました。

富士見台からは、棚横手山を至近距離で望めます。ところが、その山頂付近まで林道が通じているのを見て、当初に予定していたピストンで登頂する意欲がしぼんでしまいました。行くのなら、もっと先の、もっと高い山まで行きたいと思ってしまうのです。そこで次の鞍部から、大滝不動尊に降りることにしました。その分、富士見台での滞在時間を延長し、熱い紅茶と白銀の峰々を、ゆったりと味わいます。富士見台(1170m+)がこの日の最高到達地点になりました。

段落見出し大滝不動尊への道

富士見台を発つと、もう登り区間はありません。棚横手山の手前の鞍部で道標を確認。「展望台 大滝不動尊」を指す方向に下ります。きょう初めて日陰の道になりました。火の用心を促すリス君の円盤が目立ちますが、きょうはかつての山火事の現場を歩いて来ただけに、リス君の姿が生きて見えます。この山道を10分ほど下ると、早くも林道に合流しました。標高1060mあたりです。地図で見ると、この林道は菱山深沢林道の支線だと思われました。

その林道を下って行くと、右手に大きな滝が見え、その下に大滝不動尊のお堂がありました。その大きな滝は「雄滝」で、白く氷結しています。さらに5分ほど下ると四叉路がありました。大滝不動尊へは右折ですが、、直進して「甲斐御岳山展望台」に行ってみます。木製の鳥居をくぐって進むと、コンパクトな甲斐御岳山の社殿と、雄大な南アルプスの展望とがありました。大滝不動尊から登ってくる人々は、ここで大いに感激することでしょう。

大滝不動尊に向かいます。四叉路に戻り、山道を下りて行くと、再び雄滝が見えました。滝の全容を見せるために、木々を伐採したのだと思います。少し下って、金界坊堂。金界坊と言うのは、大滝不動尊を草創したお坊さんだそうです。さらに少し下ると、右手に氷瀑が見えました。これは「髪洗滝」(かみあらいだき)。誰が髪を洗ったのでしょうか? そして本堂のわきに下り立ちます。その裏手に「雌滝」を見に行きましたが、細いせせらぎが見えただけでした。

段落見出し大滝不動尊からの長い林道

本堂を表敬訪問しましたが、暗くて中の様子は分かりませんでした。立派な本堂と寺務所があるのですが、人の姿が見当たりません。今朝の大善寺のように、シーンと静まり返った山寺。しかし何歩か下がって見上げると、雄滝を背負った本堂には若者のような力を感じました。やや急な石段を下り切ると、清掃の行き届いた仁王門。これを内から外へと抜け、振り返り見ると、参詣客でにぎわっていた年末年始の香りが、まだ微かに残っているように思いました。

門前には男女のトイレがありましたが、閉鎖中でした。駐車場から、いよいよ長い林道歩きに入ります。覚悟はしてきました。何しろ、ここは標高910m+もあるのです。小金沢連嶺の湯ノ沢峠や米背負峠からだって、長い林道を幾度も歩きました。ヤマレコアプリが、現在時刻と標高を声で知らせてくれますが、勾配の緩やかな林道では、なかなか高度が下がりません。紅葉の季節だったら、楽しく歩けたでしょうか? ところが、いつしか標高は気にならなくなりました。

下山の目標物は、「ぶどうの丘」です。人里に入ると、地図を見るのはやめました。運試しを兼ねて、新しそうな農道や、これだと思う小道を積極的に選び、ぶどうの丘の方向に下りて行くのです。「三光寺旧跡」まで来ると、駅の近いことが分かりました。バス通りに出て、左折します。すると、左手に堂々と鎮座する甲州高尾山がありました。駅のアナウンスも聞こえます。歩行者・自転車用の小さなトンネルを抜けると、今朝の出発点である駅前広場が目の前でした。

段落見出し甚六桜公園

次の上り電車は30分後です。旧勝沼駅プラットフォームを再生した「甚六桜公園」に行ってみましょう。この季節、桜の花も葉もありませんが、桜吹雪を通り抜ける電車を想像することはできます。古いプラットフォームには、スイッチバックのあった時代の駅名標が復元され、隣駅「はじかの」と「えんざん」の文字が見られます。もし桜の時季に中央本線で甲府方面に行くことがあれば、各駅停車に乗って、甚六桜がよく見える窓ぎわに席を取ってみましょう。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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