金時山と明神ヶ岳は、箱根山の古い外輪山の峰々で、火成岩の露出や切れ落ちた尾根が随所にみられます。眺望に優れ、箱根山や富士山はもとより、多くの山域や海を望むことができます。
2014年4月1日、国土地理院は、金時山の標高値を1m低く変更しました。
小田急箱根高速バス: 最寄停 → 乙女峠 伊豆箱根バス: 大雄山駅 ← 道了尊 箱根登山バス: 新松田駅 ← 関本(大雄山駅)
地理院地図: 金時山 , 明神ヶ岳
金時山・明神ヶ岳の天気: 南足柄市 , 金時山 , 明神ヶ岳 , 道了尊
2016年1月1日(金)、元日登山として、箱根の金時山と明神ヶ岳に行ってきました。絶好の日和に恵まれ、山は新春を祝うような澄み切った空気に満ちていました。初夢を見ているような美しい富士山と箱根の山々、青い水を湛えた芦ノ湖、駿河湾、相模湾。山も海も空も人を呼んでいるようで、年の初めから大きく胸が膨らみました。
今回は乙女峠登山口から入山することにしたので、アクセスの便利な小田急箱根高速バスを利用しました。前夜にWEBで予約しようとしたら、残席はわずか2。元旦になって、実際に乗車すると、確かに私の席の他に1席が空いているだけで、車内はびっしりと乗客で埋まっていました。このバスは新宿始発です。高速の車窓からは、前方右手に赤富士が見え隠れしていました。
乗客のほとんどは、東名沼津とJR沼津駅で下車しました。その多くが、中国人だったようです。ガラガラになったバスに、ハイキング姿の人々が数人乗り込んできました。JR沼津駅バス停は、降車専用だと思っていたのですが、空席があるときは乗車できることが分かりました。
乙女峠バス停で下車すると、広大な富士のパノラマがありました。素晴らしい快晴です。もう十分に満足できる眺望ですが、さらによく見えるという「富士山絶景、乙女の鐘」と銘打った展望台に上ってみました。誇らしげに「富士山眺望遺産」とも書いてあります。でも展望台はヤブで視界が狭まり、眺望の雄大さは乙女峠バス停よりも劣っていました。
金時山に向かいます。乙女峠バス停から本当の乙女峠まで、約30分の登りですが、この間に眺望はありません。汗をかかずに到着した乙女峠には、小さな木製の展望台がありました。富士山は見えますが、ヤブがごちゃごちゃして視野が狭く、カメラを向ける気にはなりません。他方、休憩ベンチのある南東側は大きく開け、行く手の明神ヶ岳や、噴煙を上げる大涌谷を擁する大きな神山を望めました。
乙女峠からは、箱根外輪山の狭い尾根道を時計回りに歩きます。力こぶのようにポッコリと立つ金時山。山頂に至る登山道は3本ありますが、いずれも傾斜が急です。でも大した距離はないので、小学生や園児たちも元気よく登って行きます。この日は霜柱がたくさん立っていました。そのうち気温が上昇すると、土ごと融けて、ぐちゃぐちゃのぬかるみになりそうです。
長尾山を越えて、また登り返し、平坦な山頂を持つ峰に立つと、金時山がぐんと目の前に近づきました。この辺りは右側(南面)の展望が素晴らしく、神山を囲む箱根外輪山、その内側の仙石原、奥には青い湖水を湛えた芦ノ湖を望めます。湖に浮かぶ船は『海賊船』でしょうか。そして、乙女峠からゆっくり50分余りで、きょうの最初の目的地、金時山頂に到着しました。
惜しみなく美しい姿を見せる富士山は、例年よりも薄めの雪化粧。一つの障害物もなく裾野から山頂までを望めるところが、誰が言い始めたか、金時山を「天下の秀峰」とする所以でしょう。富士の右裾には白銀の間ノ岳と北岳、雪の少ない甲斐駒ケ岳。左手に控える愛鷹山塊、どっしりした神山、これを守るように立ち並ぶ外輪山。遠く天城山地の右には駿河湾の反射光。ここで岩に腰を下ろして熱い紅茶を飲みます。すでに10時過ぎですが、思いのほか人が多くありません。
せっかく金時山に来たので、撮影用のマサカリを担ぎました。マサカリに「金時山 1212m」と書かれています。先回来たときは1213mでした。でも1212mになって、標高を憶えやすくなったでしょう。さて、10時半を回り、山頂に人が増えてきました。きょうの予定では、まだまだ先が長いので、山頂を辞し、明神ヶ岳に向かいます。金時山頂の古い道標に「仙石原55分、明神ヶ岳2時間5分」とありました。なかなか健脚向きの道標だと、私は思います。
矢倉沢峠への下りでは、次から次へと登って来る人々と「こんにちは」を交わしました。「おめでとうございます」と言う人はいませんでした。この下り道からは、明神ヶ岳まで延々と続くカヤトの登山道を一望できます。見た目にはのどかそうな道ですが、目隠しされたアップダウンを繰り返す、なかなかハードな道です。特に夏は日差しを遮る樹木がなく、試練の道程になります。
矢倉沢峠から、カヤトの登山道に入ります。振り返れば、もっこりと突き立つ金時山が頼もしそうです。金時山と長尾山の間から、白い富士山の頭がほんの少し出てきました。以後、明神ヶ岳山頂に至るまで、ずっと金時山と富士山に見守られながら歩くことになります。ここのカヤトは、ハコネダケと呼ばれ、真っ直ぐで細く、節がすらりとしています。戦国時代には弓矢を作るのに用いられたかもしれません。
登って行くに連れ、富士山が競り上がって行きます。やがて金時山を抜いて、その上に大きく聳え立つのを楽しみに登って行きました。「明神ヶ岳 40分」と書かれた道標から先では南面が開け、開放感のある空間に、明神ヶ岳を見上げながら歩くようになります。春から秋には色々な山野草が咲き、野イチゴが実り、私のような者は道草ばかり食うことでしょう。
カヤトからススキ原に変わり、階段を登ってその先の急登を抜けると、東西に横たわる稜線に立ちました。丹沢の山々がよく望めます。ここで小休止しました。振り返ると、すでに金時山は富士山の前景の一部でしかありません。その後、山頂に近づくに従い登山道がぬかるんできました。表丹沢と同じような状態です。それでもアイゼンで土を掻いてないだけましでしょうか。矢倉沢峠以来、出会ったのは、行く人と来る人を合わせて3人だけでした。
13時24分、ようやく明神ヶ岳に到着しました。金時山から3時間弱かかったことになります。山頂は、田んぼのように土が柔らかくなっていました。私と同じ、乙女峠バス停から歩いて来た単独男性は、はるばる京都から来たとのこと。強羅方面に下りると言っていました。単独のトレイルランナーは、再び金時山に戻るとのことでしたが、若いっていいですね。私は上下に並んだ富士山と金時山と、箱根の山々を眺めながら、菓子パンと紅茶で休憩しました。
山頂から3分ほど稜線を南に下ると、「大雄山最乗寺 90分」と書かれた道標がありました。ここで相模湾が広大に望めます。眼下には小田原市街地、江の島と三浦半島の向こうには東京湾と房総半島。私は山の上から海を眺めるのが好きなので、しばし足を止めて、この正月プレゼントのような風景に見入りました。
最乗寺への道は、海を眺めながら歩く、気分の良い道でした。所々で道がぬかるんでいて、何度かスケートのように足が滑りましたが、幸い転倒はしませんでした。神明水を過ぎるとまもなく植林帯に入ります。はるか遠くから寺院の鐘の音が聞こえて来ました。鳴る間隔が不規則なのは、一般参詣者が撞いているのでしょう。林道を横断し、狭くえぐれたV字溝の道を通り抜け、また林道を横断します。12体の石仏の前を謹んで歩いて、16時7分、最乗寺にゴールインしました。
大きな最乗寺をちょっとだけ見学します。明神ヶ岳登山口には、赤い大きな「和合下駄」があって、登山口のよい目印になりそうです。間近の「碧落門」を通ると正面に大きな本堂。その手前を左折すると、右手に多宝塔や鐘楼など。そしてその先の石段を昇ると、「御供橋」と「結界門」がありました。結界門の向こうは異界でしょうか。行ってみたい気もしましたが、今回はここまで。バスの行列に並ばねばなりません。
道了尊バス停には、夥しい数の参詣客がバスを待っていました。右の大きな列は駐車場のあるグランド行き、左の比較的細い列が大雄山駅行きの列です。バスはたくさん用意されていたのに、(厄払いを受ける?)車両で参道が渋滞し、来るのに手間取っているようでした。私は5台待ちでバスに乗れましたが、発車すると渋滞もなく、すんなりと大雄山駅行きに到着しました。向かいの乗り場から、発車寸前の新松田駅行きに乗り換え、最後は急行新宿行きに乗って順調に帰宅しました。
今年の元日登山は、素晴らしい眺望に恵まれました。幸先の良い新年です。皆様にも良い一年となりますように。
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