ハナネコノメは、とても小さな花です。それを知らずに歩くと、踏みつけてしまうかもしれません。自生地では、足下に注意しましょう。
地理院地図: 景信山
景信山の天気: 八王子市 , 高尾山
レポ: 小下沢から景信山 , 嵐山・福寿草・景信山
3月5日(木)、高尾駅から相模湖駅まで、ほぼ旧甲州街道沿いに歩いてきました。目当ては、沿線に咲く、早春の花々。紅梅は見頃、白梅はもう少し先、ハナネコノメは初々しい花が咲き始め、フクジュソウは黄金の輝きを見せていました。おまけは弁天橋の野良猫たち。食べ物をせがんで付きまとわられ、ネコづくしの一日になりました。
わが家の周辺では、紅白梅が見頃を迎えています。高尾梅郷はどうでしょうか。また、ハナネコノメの咲く小下沢とフクジュソウ保護地にも行きたいと思います。開花時刻を考慮し、ゆっくりと家を出ました。そのため、電車内ではずっと立ちっ放し、高尾駅に着いたのは午前9時50分。北口から出て、国道20号を西へ歩きます。小仏川に架かる上椚田橋(かみくぬぎだばし)から遊歩道梅林を見渡すと、紅梅は花が見られるものの、白梅はほとんど花が見られませんでした。
次々と梅林を通り抜け、旧甲州街道(都道516号)を経て、木下沢(こげさわ)梅林にやって来ました。今年(平成27年)の特別開放日は、3月14日(土)から29日(日)までの毎日です。きょうはまだ園内に入れないので、西の高台から眺めました。梅林は、ほんのり色づき始めていて、これから14日までにはきれいに染まることでしょう。折りしも、ヘリコプターが離陸するところで、これを見るほうがわくわくしました。
小下沢風景林の広場に来ると、さっそく小下沢を探索しました。辺りの植物が踏まれたり、折られたりしているのを見ると、すでに何人かが入ったようです。ハナネコノメは、撮影しているうちに日が当たり始め、生き生きとした色を現わしてくれました。半開のつぼみが、皆そろって太陽の方を向いています。ところで以前は、小群落がいくつもあったように思います。今回、あちこちと探索してみましたが、ごく小さな株が一つ見つかっただけでした。消滅することもあるのでしょうか。
広場で休憩していると、熟年男性二人組が近づいてきました。思ったとおり、花の場所を尋ねられます。「初めてですか?」と私が質問すると、「そうです。」私は少し心配しながらも、教えてあげました。この二人は、教えた群落のある場所を通り過ぎて行きました。「行き過ぎでーす!」「えっ?」とか叫んでいるうちに、男性の一人が群落を踏みつけそうになりました。「踏んじゃダメー! 足下見て!」「あ、これ?」...あやうく『♪ネコふんじゃった』になるところでした。
朝入れた魔法瓶のお茶は、熱すぎて飲めませんでした。気温が上がって、冷めにくくなったのでしょう。ありがたいことに、小下沢の木橋を渡ったところに水場ができていて、コップまで備えられていました。冷たい水を美味しく飲めます。山に春が来たんだなあと実感しました。うれしい力水を得て、これより景信山に登ります。
景信山には、汗をかくことなく登れました。登山道半ばから見えた北高尾山稜が、景信山頂からはずいぶんと低く見えます。建造物で見つけ易いのは西武ドーム。これを目印に、関東平野一円を見渡せますが、はるか遠方は霞んでいました。もはや冬の空気ではありません。眼下の山林からは、煙のようにモウモウと風に舞う花粉が見られました。
残念ながら、富士山は全く見えませんでした。大室山、檜洞丸から始まり、大山へと連なる丹沢の峰々も、春らしく淡いシルエットのみ。その中に、これから向かう相模湖の湖水が光っていました。近場の小仏城山から高尾山に続く山並みを見やると、通常は濃緑色の針葉樹林帯が、憂鬱な褐色を帯びています。この日、山ですれ違った人の中に、マスク姿の人がたくさん見られました。
話が前後しますが、摺指(するさし)の豆腐屋さんは、定休日(木曜)でした。山頂の「かげ信小屋」も、「景信茶屋」も、きょうは休みです。裏高尾町では庭先のミツマタが黄色い花を咲かせていましたが、山頂のミツマタは、まだつぼみが固く閉じていました。野ざらしの古びたテーブルとベンチばかりが、むやみと並ぶ侘びしい山頂。私は熱いお茶を飲むと、冷たい風の通り抜ける山頂を後にしました。
小仏峠へは、速足で駆け下りました。空に雲がどんどんと拡がってきたからです。フクジュソウの花は、日が陰ると閉じてしまうので、青空の残っているうちに、保護地まで行かねばなりません。小仏峠の大・中・小タヌキたち(信楽焼?)も、こんな日は陰気な顔に見えました。小仏峠からは、旧甲州街道(県道516号)を西へ、小原宿に向かって下ります。県道と言っても山道なので、車は通りません。
フクジュソウの保護地に着くと、うれしや、まぶしげな黄色の花がたくさん咲いていました。みんな私の方を向いて咲いてるみたいで、何だか歓迎されているような気分です。管理人の方が付近に見当たらなかったので、黙って入らせていただきました。栗畑のような落葉の斜面に、光沢のある花弁を目いっぱい開いて、パラボラアンテナのように太陽光を体に集めているようです。つぼみも多少あるので、あとしばらく見頃が続くでしょう。フキノトウも落葉の間から顔を出していました。
撮影を始めると、なんと、陽が差してきました。空に小さな青い窓が開いて、お日様が顔を出しています。フクジュソウはますます輝きを増し、自動露出では真っ白な花のように写ってしまうことも。この恵まれた時間は長くは続かないでしょう。急いでたくさんのショットを撮りまくりました。あまりに嬉しかったので、ここを去るとき、誰もいない花園に向かって一礼しました。
引き続き、小原宿方向に進みます。途中にネコヤナギの木がありました。春を待ちきれないように、花芽がふくらんでいます。ゆるやかな坂道を中央本線に沿って下って行くと、正面に石老山と観覧車が見えました。線路下をくぐって国道20号に出ると、底沢バス停です。次のバスまで55分もあったので、相模湖まで歩くことにしました。国道沿いに歩けば駅まで2kmの道のりですが、多少遠くなっても千木良(ちぎら)に回り、東海自然歩道を歩きます。
弁天橋の近くまで来ると、屋外スピーカーから放送が流れてきました。少々聞き取りにくかったのですが、その内容は、まもなく発電機をもう1基運転するので、相模ダム下流の水位が1mほど上がるという通告だと思いました。もしかしたら、その様子を橋から見ることができるかもしれません。弁天橋に進み、その中ほどで立ち止まって上流を望んだとき、にゃあにゃあと向こう岸から4匹の猫がやってきました。振り返ると後ろからも1匹。みな速足です。
猫たちは私の足下に来て、私の顔を見上げています。何もやらずにいたら、その場に座り込みました。野良猫だと思いますが、おとなしそうです。放流はすぐには始まらないと思ったので、橋を渡って行くと、猫たちが後について来ました。向こう岸に着くと、傾きかけたベンチに腰を下ろし、お茶を飲もうと、リュックを開きました。そのとたん、猫たちが豹変。爪を立て、野生児のように膝の上に上がってきました。魔法瓶を取り出すと、食べ物だと思ったのか、遠慮なく蓋に手を伸ばす始末。
私は魔法瓶を手に持ったまま、猫たちから逃げるようにその場を去りました。きつい傾斜のコンクリート道を急いで登ると、息が切れましたが、猫はついて来ませんでした。ところで、この坂道を上りきったとき開ける里の風景は、私のお気に入りスポットです。東海自然歩道が、ここは農家の敷地内を通っているように見えます。
相模発電所でダム下流の水を見ていたら、背後でコチンと、小石が落ちるような音が聞こえました。振り向くと、カラスがクルミ大の木の実を道路に落としたところでした。カラスは割れなかった実を拾って飛び上がり、また落としました。すぐさま2羽のセキレイが、落ちた実に駆け寄ります。セキレイたちの足は速く、カラスが降りてくる前に横取りされそう。でも木の実は割れていませんでした。
湖岸の相模湖公園をきょうのゴールとしました。ここは石老山や嵐山を間近に望めます。きれいなベンチに腰と足を休め、昼食の残りを平らげました。この公園には緑の円形屋根の東屋があります。中央に鐘が吊るされていたので、紐を引いてみました。振り子をごく軽く鐘に当てたつもり、でしたが、大きな音が鳴ってびっくり。澄んだ、きれいな音が、夕暮れの近づいた湖岸に響き渡りました。
Alt + < = 戻る。 Alt + > = 進む。 Internet Explorer では、最後に Enter を押してください。 了解