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伊勢沢左岸尾根

伊勢沢左岸尾根

伊勢沢左岸尾根920m地点

ここで言う伊勢沢左岸尾根は、便宜上の呼称です。伊勢沢と焼小屋沢の中間にあり、平丸分岐より200m北東の無名峰を頂点とする尾根です。

焼山は、丹沢主脈最北端の峰です。頂上に展望台と小さなシラカバ林があります。

バス停 神奈中バス: 橋本駅 → 鳥屋 登山口
バス停 神奈中バス: 三ケ木 ← 焼山登山口 登山口
バス停 神奈中バス: 橋本駅 ← 三ケ木(乗り換え)

地図 地理院地図: 伊勢沢左岸尾根711m峰 , 焼山

天気 伊勢沢左岸尾根の天気: 相模原市 , 袖平山 , 鳥居原 , 青野原

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コース & タイム 鉄道駅 橋本駅 バス停 7:55 == 8:43 鳥屋バス停 8:45 --- 9:00 コッコパーク前 9:00 --- 9:15 奥野隧道 9:15 --- 9:31 水沢橋車両ゲート 9:31 --- 10:33 伊勢沢左岸尾根取り付き 10:33 --- 11:30 711m峰 11:40 --- 12:52 1039m峰 12:52 --- 13:12 東海自然歩道横断 13:12 --- 13:15 伊勢沢左岸尾根の頭 13:32 --- 13:58 焼山 14:05 --- 16:08 西野々バス停 バス停 16:22 == 16:44 三ケ木 バス停 16:50 == 17:32 橋本駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
焼山 やけやま:標高 1056.6m 単独 2016.11.29 全 7時間23分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

1年前、ガタクリ峰、棚上ノ丸を擁する尾根を登ったとき、右手の伊勢沢の対岸にきれいな尾根が見えました。いつか歩いてみたいと思い続けてちょうど1年。去りゆく秋を惜しみながら、天気の良い日を待って、歩いてきました。アプローチがやや長かったものの、期待にたがわぬ美しい尾根は明るく静かで、心豊かに秋の日を楽しむことができました。

段落見出し 鳥屋バス停から、長いアプローチ

橋本駅北口から乗った、鳥居原ふれあいの館行きバスは、ガラガラに空いていました。不採算でも運行する理由が、何かあるのでしょう。鳥屋で私が下りると、乗客はいなくなりました。バスは左へ、私は右へ。串川に沿って、その上流方向へ進みます。コッコパークと松茸山自然の森公園を経由して、水沢橋の車両ゲートまで徒歩で正味45分。車で来れば、この45分を歩かずにすみますが、周回ルートを計画するには、この山域に明るくなければなりません。

水沢橋から、なおも水沢林道をテクテク、音見沢を越え、焼小屋沢(やきごやざわ)を越えて行きます。正味1時間ほど歩くと、切通しにやって来ました。これから登る伊勢沢左岸尾根の尻尾切りです。切通しから西方に100mほど行くと、北面に東海自然歩道の通る稜線を望める場所があり、ここで林道の右から尾根が立ち上がっていました。地図と照合し、ここから伊勢沢左岸尾根に取り付きました。

尾根には濡れた落ち葉がびっしりと敷き詰められ、はじめは滑りそうに思いましたが、立ち木がたくさんあるので、安心して登れました。そのうち日が差してきて、気分は上々に。地形図に650mの等高線が小さな楕円を描く峰に達すると、行く手の711m峰がはっきりと姿を現しました。「セブン・イレブン」と勝手に命名します。空は真っ青、山は紅葉色。隣の尾根や、そのまた隣の尾根も、きれいです。いずれ機会があったら歩いてみたいと思います。

段落見出し 静寂の尾根歩き

ところで、650m+峰の先が見渡せません。尾根がぷつんと切れているのでしょうか? 小さくてもキレットの下降は厄介です。でも行って見ると、ちゃんと歩ける尾根が続いていました。立ち木もあるので、安全に下れます。地形図の等高線は10m間隔に引かれているので、10m未満の段差は地図上に表れるとは限りません。未知のルートを辿るときは、現場に行って初めて知る難所や迷所もありますが、そうしたプチ冒険も、山歩きの様々な魅力の一つになっています。

取り付きからおよそ1時間、モミジの美しい小峰に立ちました。地形図にある711m峰です。ここを勝手にセブン・イレブンと命名。リュックを下ろし、熱々の甘い紅茶を飲みます。時刻はすでに11時半。空腹を感じたので、どら焼きを出してパクつきました。ここは眺望がないので、どら焼きを半分だけ食べてすぐに出発。その小峰から5分ほど登ると、神奈川県の石標が立っていました。この尾根では初めて見る人工物です。この種の標石は、その後も何か所かにありました。

石標から5分ほど登ると、尾根の幅が広がり、明るい日差しの降り注ぐ、すてきな尾根になりました。さらに5分ほど登ると、尾根幅がとても大きく広がり、葉を落とした中低木がまばらに立って、山上庭園のようになりました。落ち葉をサクサクと踏みしめながら、のんびりと登って行きます。しばらく寝そべって行こうかな。でも先ほど休んだばかりだし、まあ、ゆっくりと歩いて行こう。サクサク、時間はたっぷりとあります。きょうは、ここに来て、本当に良かった!

段落見出し ずうっと続く美しい尾根

ところで、左手の稜線にポコポコポコと、丹沢三峰が見えています。ここから眺めると、無名ノ頭が三峰の主峰のようにも見えます。太礼ノ頭は、三峰からやや離れて、三峰の附録みたいだと言ったら失礼でしょうか? 撮影するときは、四峰を撮らないと、丹沢三峰を撮影したことになりません。あの四峰にシロヤシオやトウゴクミツバツツジが咲く頃、ここ伊勢沢左岸尾根にはどんな花が咲くのでしょうか?

標高900mあたりに、展望の利く場所がありました。よっしゃ!と、ティータイムにします。丹沢山から三峰を経て宮ヶ瀬に延びる長い稜線や、それと並行して本間ノ頭から延びる栂立尾根が望めます。残ったどら焼きを食べ、紅茶をすすりました。疲れも取れたのでリュックを背負います。すぐ先に、アセビの群生地がありました。そうか、ここはアセビが咲くんだな。アセビの花は、ツツジ類の花と比べると小さくて地味ですが、近くでよく見ると、とても可憐な花です。

この美尾根は登るほどに、ますます美しくなって行くように思いました。ここに簡単に来ようとすれば、東海自然歩道から下ってくることもできます。でも得られる感激は、下から登ってこそ、大きく、忘れがたくなるものでしょう。針葉樹林帯に入ると、踏み跡が現れました。1039m地点(と推定される場所)を通過します。右手後方に、宮ヶ瀬湖も見えてきました。

段落見出し 最高点を目指して

午後1時ころ、前方から熊鈴の音が聞こえてきました。単独の熟年男性です。お互いに「こんにちは。まさかこんなところで人と出会うとは!」この方は、水沢橋に駐車して、急峻な尾根(幕岩の横?)を登って東海自然歩道に至り、黍殻避難小屋まで行ってお昼を食べてきたそうです。それにしても、この山域で周回ルートを計画し、道なき尾根を軽快に下って行くとは、きっと相当な山のベテランなのでしょう。この日、山で出会ったのは、この方一人きりでした。

針葉樹林を抜けて、再び明るい落葉樹林になりました。足がどんどん前に進みます。やがて尾根の傾斜がほとんどなくなって、東海自然歩道を横断しました。あと少し、尾根の頂点まで登り詰めます。その頂点は、平丸分岐の北東、約200mにある、なだらかな小峰で、地理院地図(電子国土)の標高表示よれば、1165mです(誤差あり)。水沢林道より取り付いてから2時間半、伊勢沢左岸尾根を完登(?)しました。

山頂標はありませんが「水源の森林」と書かれた白い杭が立っていました。今その源頭である分水嶺に立っています。ここに降った雨は神奈川県の水源とるので、私も飲んだかもしれません。リュックの中の魔法瓶にも入っているかも知れません。私はまだ熱かった紅茶を飲み、落ち葉の上に仰向けに寝て、空を見つめました。気分は爽快、枯葉のぬくもりも快適。山との接触面積を最大にして、山に抱かれる感覚を楽しみました。もちろん、ヤマビルの心配はありません。

段落見出し 下山

まだ下山地をどこにするか決めてありませんでしたが、時計を見て、西野々に下りることにしました。焼山まで東海自然歩道を歩きます。何度も歩いた道ですが、きょうは何だか貴重な道に思えます。幾筋もある尾根と谷にも、いつ頃からか、愛おしいような感情が胸にうごめいていて、もしかしたら、この山域にハマりそうな予感がしました。

焼山では展望塔に上り、東丹沢の山々と宮ヶ瀬湖を、とっくりと眺めました。見える峰々、尾根、沢、すべて同定できたらいいだろうなあと思います。展望塔から下りると、バスの時刻を考えながら、ゆっくりと山を下りて行きました。焼山から西野々、または焼山登山口への登山道は、中小の岩石がゴロゴロしています。多くの人が歩くと、草が生えなくなり、土が露出し、流され、石ころだらけの道になることがあります。実際は、そんな単純な話ではないかも知れませんが。

時間調整はうまくゆき、あまり待つことなく、三ケ木行きのバスに乗れました。今回も無事に下山できて感謝です。ヤマビルたちが休眠しているうちに、東丹沢の山をもっと歩いておこうと思います。

木の葉ライン

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