本仁田山は、奥多摩駅、鳩ノ巣駅、白丸駅から歩いて登れます。いくつかの登山ルートがありますが、北に位置する川苔山と結んで縦走することもできます。
交通機関の乱れで予定が狂った場合などの、バックアッププランとしても、本仁田山は、便利な位置にある山です。
地理院地図: 本仁田山
本仁田山の天気: 奥多摩町 , 奥多摩駅
6月7日、奥多摩の本仁田山に行って来ました。山頂付近は濃い霧に覆われ、展望は全くありませんでした。ただ、侘しい山頂に咲いていた、眼の覚めるようなヤマツツジの花だけが、心を満たしてくれました。
実は、今回の山行は、リハビリ登山です。約半月前のある晩、左の腿の付け根にズキッと痛みを感じました。左足に体重を乗せるたびにズキズキと痛むので、ほとんど歩けない状態に。その時は、一過性の痛みかもしれないと思って、一日様子を見ることにしました。翌朝、全く痛みはなかったのですが、晩になって前日と同じように痛くなりました。その翌日、私は整形外科医を訪ねました。
診察の結果です。
さて、山に登るのは約1ヶ月ぶりです。青梅線白丸駅の標高が約320mなので、本仁田山へは、約900mの単純標高差を登らねばなりません。リハビリ登山としては、少々きついかな、と思いましたが、バスを利用しないので、どんなにゆっくり歩いても大丈夫だという安心感があります。台風3号が本州の太平洋側沖合を通過した翌日、「台風一過」後の晴天を狙って、奥多摩に向かいました。白丸(しろまる)駅からゴンザス尾根を登って、花折戸尾根を鳩ノ巣駅に下るという計画です。
午前8時、白丸駅に到着。ゴンザス尾根の取り付きは、ちょうど白丸駅と奥多摩駅の中間にあります。まず、白丸駅の近くの数馬峡橋(かずまきょうばし)で多摩川の右岸に渡り、遊歩道を歩いて氷川発電所の前まで行きました。多摩川の水がとてもきれいに見えたので、しばらく河原に下りて流れに触れた後、海沢大橋(うなざわおおはし)を渡って多摩川左岸に戻りました。
しばらく奥多摩駅方向に歩くと、右手に白いコンクリートの坂道が見えてきました。民宿山田荘のすぐ手前です。坂の入口に本仁田山・ゴンザス尾根と書かれた、きれいな道標が立っています。坂上の日向集落に入って行くと小さな神社があり、そこの道標に従って石段を上ると、ゴンザス尾根を経て本仁田山です。これより先、山頂まで迷いそうな箇所はありませんでした。
杉と檜の針葉樹林帯を登って行くと、電線の束を背負った作業員たちが降りてきました。撤去した電線を運び下ろしているようです。「どこに行きますか?」と尋ねられたので、「(もちろん)本仁田山です!」と応えました。登山道には、「NHK施設へ」と書かれた小さな杭がいくつも打たれています。NHKの作業員も通行するのでしょう。その「NHK施設」までは、道もよく整備されていました。電子国土地図では道が尾根すじ上についていますが、実際は尾根の東斜面に道があります。
4号送電鉄塔の下に来ると、見通しが良くなっていて、正面に大岳山から御岳山を経て東方に連なる山々がよく見えました。下に見える集落は、海沢でしょうか。先ほどまで真っ青だった空は、今ほとんど雲で覆われています。台風の通過直後なので、まだ強い風が吹いてきます。汗ばんだ体には心地よかったのですが、油断すると風邪を引きかねないので、休憩は短めにします。
パラボラアンテナを過ぎると、道は尾根上を正直に辿るようになります。明るい混合樹林を気持ちよく登って行きました。ところが、ある場所で小休止を取って立ち上がったとき、左の腿の付け根がズキッと痛みました。半月前の痛みと同じです。何だ、治っていないではないか!これはまずいぞ。このまま引き返そうかとも思いましたが、歩幅を小さくして脚に負担をかけないように歩けば、何とか歩き続けられそうです。花折戸尾根の出合まで行って、様子を見て決めることにしました。
ゴンザス尾根は起伏があまり無いのと、傾斜が比較的に緩やかなので、小さな歩幅でゆっくり歩けば容易に登れます。尾根はところどころ痩せていて、露岩も見られます。霧が次第に濃くなってきて、山に魔法がかけられたかのような趣を呈してきました。真っ赤なヤマツツジの花だけが、霧の影響を受けないかのように鮮やかな光彩を放っています。
日向の登山口から2時間10分かけて、ようやく花折戸尾根を右から合わせました。そこから先は北西に向かい、チクマ山をはじめ、いくつかのゆるやかな起伏を越えて行きます。最後の鞍部を通過すると、傾斜がややきつくなりましたが、山頂まであと一息です。花折戸尾根を合わせてから45分ほどで、大休場尾根(おおやすんばおね)を左から合わせました。本仁田山頂はその3分先です。
山頂には誰もいなく、ひっそりとしていました。ボロボロになったトタン屋根の休憩所の中に、壊れた古い山頂標が置かれていました。ますます霧が濃くなっていて、展望は全く利きません。何とも侘しい山頂です。無彩色に近い風景の中で、赤いヤマツツジの花だけが、堂々と咲き誇っていました。(上の写真)元気いっぱい、生命の輝きそのものと言っていいような、オーラを感じます。この花の前で腰を下ろし、昼食にしました。
展望が利かず、花も咲いていない時にこの山頂にたどり着いた人は、がっかりするかもしれません。できればせめて、朽ち果てたトタン屋根小屋は撤去して欲しいものです。屋根はすでに大きく破れています。さらに、もう少し品位のある山頂標が立てば、ずっと雰囲気がよくなることでしょう。
山頂で約30分ほど休憩して、下山の途に就きました。ゴンザス尾根と花折戸尾根の分岐点まで、来た道を戻ります。幸い、腰も脚も大丈夫なようです。これなら、鳩ノ巣駅まで十分に持ちこたえられそうです。もともと下りの得意な私は、軽快な足取りで下って行きました。
花折戸尾根には、広々とした伐採地があり、大岳山、御岳山、高水三山、西武ドームなどが見渡せました。右にゴンザス尾根を覗き込むと、朝見上げた氷川発電所が下に見えます。この見通しの良い尾根で景色を見ていると、携帯電話の不在着信音がいくつも鳴りました。通話も良好です。しかし、下の樹林帯に入ると、再び圏外表示になりました。
午後1時45分頃、しとしと、雨が降り始めました。でも雨足は弱く、背の高い樹木もたくさんあるので、雨具を取り出すほどではありません。うす青色のコアジサイがしっとり、やさしく咲いています。タツナミソウの紫色の花が写るかなと撮影してみたら、青くしか写ってくれません。そうこうしているうちに、背後から木漏れ日が差してきました。
14時20分、木々の間から、奥多摩線の線路が見えてきました。いよいよ花折戸尾根の終点です。きょうは腰をかばって極めてゆっくりと歩いたので、スタミナをほとんど消費していません。足取りも軽く、明るく晴れた鳩ノ巣駅に、悠々ゴールインしました。
翌朝、眼を覚ましてゆっくりと立ち上がりました。歩いてみましたが、心配していた腰も脚も全く問題ありませんでした。
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