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御殿森 ∞ループ

御殿森北西尾根上の小広場

御殿森北西尾根上の小広場

本記事では、Wikipediaおよび宮ヶ瀬ビジターセンターのWEBサイトに倣い、653m峰を「御殿森ノ頭」としました。

山と高原地図および東丹沢登山詳細図で「御殿森ノ頭」と記されている峰を、本記事では仮に「御殿森東ノ頭」と書くことにします。

焼山展望台より望む御殿森ノ頭

バス停 神奈中バス: 本厚木駅 → 三叉路 登山口
バス停 神奈中バス: 本厚木駅 ← 宮の平 登山口

地図 地理院地図: 御殿森ノ頭 (653m) , ルート図

天気 御殿森の天気: 清川村 , 宮ヶ瀬

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コース & タイム 鉄道駅 本厚木駅 バス停 7:40 == 8:39 三叉路バス停 8:39 --- 9:33 御殿森東ノ頭 9:42 --- 9:56 御殿森ノ頭 653m峰 9:58 --- 10:40 高畑山 10:53 --- 11:25 新多摩線29号鉄塔 11:41 --- 12:14 金沢林道ハシゴ 12:15 --- 12:25 送電線直下(丸木橋) 12:29 --- 12:50 ワレヤノ沢出合 12:53 --- 13:40 ベンチの木 13:48 --- 14:12 御殿森ノ頭 653m峰 14:14 --- 14:28 御殿森東ノ頭 14:33 --- 15:04 438m峰 15:04 --- 15:15 {ザレた作業道偵察} 15:26 --- 16:08 大門沢出合 16:09 --- 16:43 宮の平バス停 バス停 16:55 == 本厚木駅 鉄道駅
※歩行時間には写真撮影と道草の時間が含まれています。
御殿森ノ頭 ごてんもりのあたま:標高 653m 単独  2017.12.15 全 8時間4分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

12月15日(金)、今季東丹沢ヒル休み山行第4弾は、御殿森を中心に設定した、∞字形のコース。日の短い季節なので、計画にあたっては、短くて無難に歩けそうな尾根ばかりを選んだつもりでした。実際、行程の3/4まで、いや、7/8まですべて順調で、楽しく歩けました。ところが最終行程で、思いがけない難路が待ち受けていたのです。

段落見出し 宮ヶ瀬三叉路からスタート

前日にネットとテレビで確認した「終日晴れ」の予報に反し、朝の空はどんよりと曇っていました。部分的には雪雲の様相すら帯びた重苦しい空。これにはちょっとがっかりしましたが、そのうちに晴れるかも知れないと、希望的観測を採用し、計画を実行に移しました。その計画は、昨晩遅くなって、寝る前に閃いて立てたもの。好展望のコースではないので、曇天でもまあ大丈夫です。自宅から最寄り駅に向かう道は、日の出時刻を過ぎても暗く、寒々としていました。

宮ヶ瀬行きのバスが土山峠を過ぎると、宮ヶ瀬湖のはるか彼方に、明るく照らされた山稜が一瞬見えました。権現山稜でしょうか。あの日差しがこっちまで広がって来るかもしれない。だって、天気予報が「終日晴れ」だったんだから! と淡い期待を抱きながら、三叉路に到着しました。私の他に、2人の男性が下車し、待たせてあったタクシーに乗り込みました。塩見橋にでも行くのでしょうか? 私は独り、さっそく丹沢三峰登山口へ向かいます。

県道70号の傍に立つ「高畑山・丹沢山登山道入り口」の道標から、山道に入ります。この一般登山道で体を暖めること1時間弱、「御殿森ノ頭 この上」と書かれた道標に到着。この道標の指す小峰を、本記事では「御殿森東ノ頭」と呼ぶことにします。今まで素通りばかりして来ましたが、今回ついに初登頂! 頂上には石祠があり、お賽銭の小銭がたくさん積まれていました。東面に、なかなかの好展望があります。宮ヶ瀬尾根、鍋嵐、大山などを豊かな三次元で望めました。

段落見出し 御殿森ノ頭と高畑山

次は、御殿森ノ頭 (653m峰) に向かいます。登山道を5分ほど高畑山方向に進むと、右手に丸みを帯びた尾根がおもむろに立ち上がりました。この尾根に乗り、積もった落ち葉に足を取られそうになりながら進んで行きます。10分ほど登ると、653m峰に到着しました。これもまた初登頂です。山頂標も、テープ類も、展望もない、地味な山頂。この峰を、本記事では「御殿森ノ頭」と呼ぶことにします。先の「東ノ頭」とともに、今回の∞形コースの要(かなめ)です。

次は、高畑山に向かい、653m峰を下ります。下りの尾根は常緑のアセビが群生し、落ち葉が少なくて、歩きやすい道でした。すぐに一般登山道と合流します。行く手に現れた小峰を東側から巻き、鞍部からの急登で一気に100mほど高度を稼ぐと、高畑山への分岐に至りました。するとチラリ、チラリと白いものが...。雪になりました。やはり晴天は無理なようです。こうなったら、いっそ積もるほど雪が降るといいな。でも高畑山頂に着く前に、雪は止んでしまいました。

高畑山頂には、冬枯れたテンニンソウのような群落が広がっていました。この峰もまた、初登頂です。こうして個人的な未踏峰を踏破して行くのは気持ちのいいもの。名のある峰ならなおさらです。三等三角点石にタッチし、ベンチに腰を下ろして、おやつと紅茶で腹ごしらえをしました。かつて、この山頂には展望台があったそうですが、今は展望も展望台もありません。誰もいない、鳥も虫も風も歌わない、静寂の山。少しゆっくりして行きましょう。

段落見出し 送電線巡視路尾根を下る

高畑山を丹沢山方面に下ります。鞍部からわずかに登り返すと、「→ No29 緑を愛しましょう」と書かれた薄黄色の杭が立っていました。この矢印の指す尾根が、送電線巡視路の尾根です。これを下って行くと、思いのほか狭い尾根でした。でも1本道で、迷う箇所はないし、落ち葉に足を取られてスリップさえしなければ、大丈夫です。尾根の途中からは、新多摩線送電鉄塔30号から始まって、延々と続く10基の鉄塔が望めました。

しばらく下って、倒れた鹿柵(植生保護柵)を越えると、目の前に天を突くような鉄塔が立っていました。鉄塔29号です。素晴らしいことに、ここで栂立尾根を一望できます。先月末にも歩いた、あの峰々、あの稜線。丹沢三峰登山道の尾根(名前は?)と東海自然歩道の尾根との間にありながら、目につきにくい栂立尾根。清川村と相模原市の境界を成す重要な尾根。豊かな自然林と、メリハリある稜線。感慨深く眺めていると、時間の立つのを忘れそうになるほどでした。

引き続き、送電線巡視路を下ります。29号鉄塔から下は、プラ階段になっていて、どんどん下れました。斜めに倒れた鹿柵と錆びた扉がありますが、強く押したら開きました。扉を押したまま慎重に通り抜けます。通り抜けてから手を離すと、扉の重みで自動的に閉じ、ガチンと扉枠に嵌りました。その後も延々とプラ階段を下ります。涸れ沢と出合ってようやく階段終了。沢を少し下ると、小さな堰堤に至ります。堰堤に固定された鉄梯子を使い、金沢林道に下り立ちました。

段落見出し 金沢林道を歩いて、ワレヤノ沢へ

金沢林道を宮ヶ瀬方面に下ります。送電線の真下付近に来ると、金沢に丸太組みの橋が架けられていました。ここできょうの行程の前半が終了、しばしティータイムにします。川原の大きな岩に寄り掛かると、曇天を破って、日が差してきました。岩も、水も、木橋の苔も、鮮やかに照らされます。それはわずか1分ほどで終わりましたが、こんなとき山の神秘を感じます。木橋の先の対岸には、梯子と穴の開いた鹿柵が見えました。何か、その先へと誘われるような気がします。

引き続き、金沢林道を下ります。気が付くと、それまで石がゴロゴロしていた林道が、いつの間にか盛り土で均されて、とても歩きやすく変わっていました。金沢林道は金沢橋から300m付近で、崩落地の復旧工事をしているので、この機会に様々な改修工事を同時にしているのかも知れません。鉄塔30号への渡渉ポイントの付近は、林道が大幅に拡幅されていました。

さて、御殿森北西尾根を登るつもりなのですが、これを見つけるのは案外容易でした。鉄塔31号の最接近地点に来て、そこで出合う沢の右岸尾根が、御殿森北西尾根です。そこの堰堤の銘板に「ワレヤノ沢」とありました。沢に入り、右岸の尾根に取り付くルートを探します。幸い、立ち木や灌木が多くあり、容易に右岸尾根に乗ることができました。もし尾根で行き詰まったら、金沢林道に戻り、通行止の工事現場を何とか通らせてもらって、宮ヶ瀬に行かねばなりません。

段落見出し 御殿森北西尾根を登る

御殿森北西尾根(ワレヤノ沢右岸尾根)も、先ほど下った送電線巡視路尾根のように、狭い尾根でした。尾根のヤセ具合は、地形図を見るだけではなかなか分からないものです。積もった落ち葉が要注意であることも同じでした。足を取られないように気を付けます。たくさんあるアセビの茂みは、時にヤセ尾根での障碍物にもなりますが、ほとんどの場合急登での手助けになりました。その枝は強靭で、ただ引っ張るだけならまず折れません。着々と高度を稼げる尾根でした。

右手の鉄塔30号と同じくらいの高度に達すると、歩きやすくなりました。尾根幅も広がり、木々が立ちます。見る見るうちに、美しい自然林へと変貌しました。紅葉の季節や新緑の季節に来れば、どんなにきれいでしょうか。標高約530mの地点に、すてきな小広場がありました。中央に「ベンチの木」があります。お一人様用の小さなベンチですが、獣のように四つの脚で踏ん張った姿が愛らしく、夜になったら歩き回りそう。この木に腰かけて、おやつとお茶にしました。

時おり、西日が差すようになりました。10秒か20秒程度の束の間ですが、山のあらゆるものが感動的に美しく見えます。ただのアセビの葉でさえ、宮殿の装飾のような華麗さ。足取り軽く登って行くと、先の小広場から15分ほどの地点に、またすてきな広場がありました。そして、山頂の直前に至ると「!登山道ではありません」と書かれた黄色の警告板がトラロープで吊るされていました。この美尾根に誘い込まれて迂闊に下って行くと、下の方で苦労することになります。

段落見出し 御殿森東ノ頭から、試練の道へ

御殿森ノ頭 (653m峰) に戻りました。きょうの行程の3/4を歩いたことになります。ここから御殿森東ノ頭までは、今朝歩いた区間を逆方向に歩きます。御殿森東ノ頭に戻ると、再び山頂に立ち、楽しみにして来た東面の風景を眺めました。今朝も眺めた山々が、いま西日を受け、雲の消え去った薄青い空に映えています。ハタチガ沢や鍋嵐北尾根(ゴジラの背尾根)なども陰影がついて、奥行き感を増しています。ここまでは、すべて順調でした。

御殿森東ノ頭から東に延びる尾根を下ります。ここは地形図で見るとおりの狭い尾根です。でも100mほど下がると、勾配も緩やかになり、のどかな落葉樹の尾根になりました。標高483mあたりと438mで、小さな盛り上がりを越えます。地形図には410mあたりから右へのトラバース道が記されていますが、これは見つかりませんでした。あるいは見逃したのかも知れません。その代わり、370mあたりから右に仕事道のようなザレ道が分岐していました。行けるでしょうか?

ザレの程度を偵察してみます。期待半分、心配半分。ところが5分ほど行くと、道が完全に斜面と同化していて、それ以上進むのは危険だと思ったので尾根に戻りました。引き続き尾根を下って行くと、「水源の森林づくり事業」の標識があり、その少し下でまた別の仕事道が右に分岐していました。もうこの道しかないと思って下って行くと、至る所で道は崩壊、補強材は崩落。もはや廃道同然の様相です。斜面に立ち木は乏しく、この道も危険と判断し、また尾根に戻りました。

段落見出し 大門橋の安堵

さて、尾根をもう少し下って、もっとマシな道はないかと探しましたが、もう道はありませんでした。尾根の最後はコンクリートの擁壁なので、下りることはできません。しかたなく意を決して、あの廃道同然の道を下り始めました。積もった落ち葉が地面を隠している箇所も多く、気が抜けません。土もしまりが悪く、ズルズルと崩れます。50mほど下の大門沢出合に、旧林道の白いガードレールが見えていました。この50mの高度差を、30分近くかけて慎重に下りました。

ようやく大門沢に下り立ちました。やれやれ。きょうは大門沢への下りだけで、十分なプチ冒険になりました。径路の下調べが不足していたことは、確かに反省点です。でも帰宅後に、御殿森ノ頭 ⇔ 大門沢間の歩行記録をWebで調べたのですが、廃道になっているとの情報は見つかりませんでした。これから計画される方は、本記事を参考にしてください。大門橋からは県道をテクテク、宮ヶ瀬湖か中津川かを眺めながら歩き、宮の平バス停に無事ゴールインしました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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