仏果山と高取山は、丹沢山塊、宮ヶ瀬湖、関東平野を望める、風光明媚な山水苑です。
宮ヶ瀬湖畔に下れば、巨大なダムを見学したり、あいかわ公園の大型遊具で童心に帰ることもできるでしょう。
神奈中バス: 本厚木駅 → 仏果山登山口(宮ヶ瀬行き) 神奈中バス: 本厚木駅 ← 半原
地理院地図: 仏果山
仏果山・高取山の天気: 神奈川県愛甲郡清川村 , 宮ヶ瀬
レポ: 仏果山・高取山 , 経ヶ岳・華厳山・高取山
11月16日、快晴の土曜日、宮ヶ瀬湖畔の仏果山と高取山を歩いて来ました。紅葉は見頃の一歩手前。緑から黄色を経て、橙、赤と、移ろい行く木の葉の色相を楽しんで来ました。ほぼ同じルートで、3年前に「野外センター前」バス停から歩きましたが、今回は反対側の「仏果山登山口」から取り付きました。
パーティーは、友人と私と、孫娘のような年頃の姉妹二人の計4名です。小田急線本厚木駅で待ち合わせ、宮ヶ瀬行きのバスに乗り、「仏果山登山口」で下車。ダム湖である宮ヶ瀬湖の、青々とした湖水を湛える深い入り江のほとりにバス停があります。登山口は道路の反対側。足慣らしをする間もなく、いきなり登山道が始まるので、各自で準備運動をしてもらいました。この秋一番かとも思えるような素晴しい晴天で、山上からの展望が期待できそうです。
登り始めるとすぐに、「ヤマビルにご注意!」と書かれた看板が立っていました。「4〜9月頃このコース付近の地面に多く発生しています」と、きれいな文字の下に、ちょっとまずい英語でも書かれています。今は秋風も寒々とそよぐ11月の半ば、ヒルの心配はありませんが、濡れ落葉のしっとりした山道は、いかにもヒルの好みそうな環境に思えました。
登り始めて10分ほど経った頃、二人姉妹のお姉さんの方の足が止まってしまいました。息は切れていません。聞くと、左ひざが痛むとのこと。立ち尽くしてしまって、相当に痛そうです。私は、早くも撤退を考慮し始めました。しばらく休んで様子を見ることにします。「どんなにスローでもいいから、無理の無い範囲で、歩けるものなら歩いてください」と励まし、ジーンズの上からひざサポーターを着けてあげました。友人もストックを貸してあげました。
幸いこれ以降、ゆっくりとですが、何とか歩き続けてくれました。バス停からいきなり登山道に入ったことで、筋や腱のウォーミングアップが不足したのではないかと思います。そこで、休憩時には体が冷えないように、休憩時間を短めにしました。そして、仏果山と高取山の鞍部である、宮ヶ瀬越に着くと、女性たちには先に高取山に行って休んでもらうことにしました。これはうまく行き、後に男性たちが高取山で合流してから、宮ヶ瀬ダムまで全員で普通に下山することができました。
話は前後しますが、宮ヶ瀬越に向かってゆっくりと登って行くとき、南方の相模湾がすばらしく輝いていました。逆光になるからさ、と言われればそれまでですが、一生懸命登っているとき、目、耳、鼻、皮膚で感じる美しい万象は、登山者に元気を与えてくれます。この登山道には、樹間に覗く宮ヶ瀬湖の青い水、見上げると大きな枝を水平に伸ばしたモミの巨樹群、緑色から赤に移り変わるモミジの葉のスペクトラムなど、こころの栄養になるものがたくさんありました。
宮ヶ瀬越から私たち男性組は、仏果山に向かいました。できるだけ早く女性組と合流できるよう、足が速く動きます。左手に仏果山を眺めながら、尾根上を東に曲がって行き、ロープの張られた急登を抜けると、仏果山の山頂広場でした。そそくさと展望台に上ります。その最上段では、期待を裏切らないパノラマが待っていました。それはもう、大切な女性組のことをしばし忘れてしまいそうになるほど。すぐに降りるつもりだったのが、10分以上も居てしまいました。
展望台の鉄階段を駆け下り、高取山へ急ぎます。宮ヶ瀬越まで戻ったら、12個のリュックサックがデポしてありました。いずれも日帰り登山用の軽リュックです。仏果山へ往復するのに、とりあえず不要だからと置いていったのでしょうが、軽リュックにはいつも持ち歩くべき必需品を吟味して詰めるもの。これはいかがなものでしょうか。カラフルなリュックのデポを、外国人のグループが珍しそうに見ていました。
さて、高取山に着くと、休んでいた女性から「お帰りなさい!」と元気そうな声。ひざも何とか大丈夫そうです。一緒に展望台に上りました。そこは仏果山の展望台に優るとも劣らぬ360度の大パノラマ。特に宮ヶ瀬湖は、高取山からの方がよく見えます。奥多摩で見つけやすいのは大岳山。大岳山を見つけると、三ツドッケも見つかります。すると、雲取山も容易に同定できました。眼下の三角山への延長線上に三頭山、石砂山への延長線上に大菩薩嶺。その露払い(右)と太刀持ち(左)は、権現山と扇山。右の石老山も、なかなか良い姿です。
宮ヶ瀬湖を前景に、丹沢主脈と奥多摩と関東平野とを一望できる仏果山と高取山は、小さな名山だと私は思います。平地より1時間半から2時間程度で登れる低山で、登山の入門にも適しています。南に経ヶ岳、華厳山と、仏教的な名を持つ山が続き、その最南端に物見櫓のようにもう一つの高取山が据えられています。この連山は、一名相州アルプスとも呼ばれます。
展望台の下のテーブルで昼食にしました。首都圏がよく見えます。東京スカイツリーを探しましたが、見つけられませんでした。お茶を飲んで、高取山から宮ヶ瀬ダムに下ります。はじめしばらく急降下しますが、小さなピークを二つほど越えると、なだらかな登山道になりました。ハイキングコースとしてよく整備され、土止め階段の段差も小さく、おそらく小さな子供にとっても歩きやすい道です。おかげで、落葉がいっぱいの斜面も楽しく下ることができました。
500m峰に立つ送電鉄塔の下の休憩所にやって来ました。宮ヶ瀬湖を越える雄大な送電線を眺められるこの場所は、私のお気に入りの展望台です。この送電線の上をネコバスのように、ヒューと渡って行けそうなイマジネーションが湧いてきます。ベンチに腰を下ろし、またお茶を飲み、記念撮影をしました。
尾根道の最後に、もう一つ展望台があります。ここで眼下の宮ヶ瀬ダムと南山を望みながら最後の休憩を取りました。残ったお菓子や飲み物を片付けるのに丁度いい展望台です。私は登山靴からスニーカーに履き替えました。ダムへの下り道で、足裏マッサージが楽しめるからです。
宮ヶ瀬湖畔に下り立ったところで、登山は終了とし、あとは見学と散歩の時間にしました。「水とエネルギー館」でトイレを借りた後、見学先は服部牧場に決めました。ダムの堤頂を対岸まで歩きます。左側は青い水をいっぱいに湛えた湖で、女性的な風景。右側はダムの下を見下ろせますが、見る度、その高度差に息を呑みます。美しい山河を創った神様は偉大ですが、人間もまた凄いものを造るものだと思わずにいられません。
服部牧場では、羊、ロバ、牛、馬などを撫でました。手を洗ってから、各自が好みのソフトクリームやジェラートを購入。私は退役したトラクターの並べられている広場に行き、その運転席で遊んでいる子供たちを見ながら食べました。広場の向こうに仏果山が、きりっとした姿で立っています。その形も味わいも、コーンに盛ったジェラートのようだと思いました。
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