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阿夫利山

阿夫利山、井戸沢ノ頭、金剛山

安寺沢右岸尾根より、同左岸尾根を望む

ここで言う阿夫利山は、山梨県旧秋山村(現上野原市)の山です。

バス停 神奈中バス: 藤野駅 → 奥牧野 登山口
バス停 温泉送迎バス: 上野原駅 ← 秋山温泉 登山口

地図 地理院地図: 阿夫利山

天気 阿夫利山の天気: 上野原市 , 秋山

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コース & タイム 鉄道駅 藤野駅 バス停 8:00 == 8:26 奥牧野 8:26 ---(道間違いで15分ロス)--- 9:34 綱子(登山道取り付き)9:34 --- 9:57 綱子峠 9:57 --- 10:08 356号鉄塔 10:20 --- 10:38 入道丸三角点峰 10:39 --- 10:43 入道丸西峰 10:46 --- 10:51 送電線巡視路上 10:52 --- 11:21 送電線巡視路下 11:21 --- 12:07 金波美トンネル西口 12:09 --- 12:16 金波美峠 12:16 --- 12:44 高見山 12:44 --- 12:47 展望地(昼食)13:01 --- 13:13 阿夫利山 13:14 --- 13:32 井戸沢ノ頭 13:33 --- 14:00 金剛山 14:02 --- 14:33 富岡の展望地 14:36 --- 14:53 秋山温泉 バス停 16:30 == 16:46 上野原駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と撮影の時間が含まれています。
阿夫利山、金剛山 あふりやま、あふりさん:標高 729m、こんごうさん:標高632m 単独 2017.11.10 全 6時間27分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

11月10日(金)、上野原市の阿夫利山を歩いてきました。ただ、阿夫利山だけでは短すぎます。そこで、先に安寺沢右岸尾根の入道丸に登り、阿夫利山と金剛山を擁する安寺沢左岸尾根のパノラマを眺めました。さらに、高見山の展望地と富岡の展望地でも素晴らしいパノラマを心行くまで満喫。期待を大きく超えて、感動の山歩きになりました。

段落見出し いきなり道を間違える

秋山温泉16:30発の送迎バスを利用するために、15:00までに温泉に到着することとし、ここから逆算して、藤野駅8:00発の奥牧野行きに乗りました。バスはやまなみ温泉で小学生たちを降ろすと、私一人を乗せて奥牧野へ。終点で下車するまで、すべて順調でした。ところが、歩き始めて1分足らずの分岐点で秋山川の吊橋に下りることをド忘れ。県道を一古沢まで歩いてしまいました。金比羅山が見えて、ようやく間違いに気づき、Uターン。15分のタイムロスとなりました。

自転車と歩行者専用の吊橋、前川橋を渡ります。橋の上から秋山川を見下ろすと、赤や黄色に色づいた木々と川の流れが、小学校で歌った「もみじ」を想わせました。その先は秋山川の支流、綱子川に沿って、車1台が通れる幅の道を進みます。「さつき学園」以外、建物のない道をテクテク。山あいの村、綱子の日照時間は少ないんだろうな、とか思いながら、さほど飽きることもなく歩き続け、いつの間にか綱子の里に入っていました。郷愁を誘う風景がいっぱいの人里です。

人里を抜けると、「通行止め」のゲートがありました。この先に土砂崩落があり、「関係者以外立入禁止」と書いてあります。これより2分ほど先、右手に分かれる林道を登ると、相変わらず放置された廃車がありました。そのすぐ先で、左手の山道に入ります。この道は送電線巡視路を兼ねていて、小さな黄色の標識が、送電鉄塔356号を指しています。その後、354号と別れるまで、この小さな黄色の標識が、丁寧に道案内をしてくれました。

段落見出し 356号は展望良好

さてその山道は、古くからの峠道によくあるように、緩やかな勾配で山腹を無理なく上って行きます。ここを歩くのは二度目。ちょっと楽しみな場所があります。そこは空が開けて、左手の高みに送電鉄塔356号を望める、数十メートルの日向みち。4年ぶりに、その場所にやって来ました。金銀のススキが陽光を浴びて、訪問者を歓迎するように植わっています。のどかな日の当たる坂道。ここで小休止し、上着を脱ぎました。小さな甘菓子を1個食べ、お茶を飲みます。

再び杉林に入ります。木漏れ日を楽しみながら一登りすると、綱子峠に到着しました。この峠は安寺沢右岸(綱子川左岸)の尾根上にあり、綱子と安寺沢の二集落を結んでいます。綱子から登って来た場合、右折すれば富岡バス停や秋山温泉へと通じ、左折すれば356号鉄塔を経て入道丸です。綱子峠では展望がなかったので、すぐに入道丸へと、緩やかな尾根道を登って行きました。そして道がやや急勾配になったかと思うと、356号鉄塔の立つ草地に上り立ちました。

まず、きょう歩く金剛山と阿夫利山とに目が行きます。西に御牧戸山、東に峰山、石老山、やや遠くに権現山稜と奥多摩三山。ただこの展望地は、評価が分かれるかも知れません。送電線を目障りに思う人もいるでしょう。私は、奥深くカテナリー曲線(懸垂曲線)を描く送電線が好きです。送電線に目を走らせれば、猫バスのように、はるか彼方まで一瞬に駆け抜けて行けそうな気分にもなります。電力は多くの工場や家庭に届き、光、力、音、熱、風などに変わるでしょう。

段落見出し 送電線巡視路を下る

展望を十分に楽しんだので、入道丸に向かいます。足どりも軽く杉林の道を登って行くと、足下にすみれの小株がいくつも見られました。春に歩けば、きっと可愛らしい花がほほ笑んでくれるでしょう。道には新型の赤帽黒杭が点々と打たれています。頭には「電発保通」の四文字がありますが、どんな意味でしょうか。三等三角点のある入道丸東峰を通過すると、右手が自然林になりました。紅葉と黄葉も見られます。そして鞍部を経て、少し登り返すと入道丸西峰でした。

入道丸西峰は、三角点のある東峰よりわずかに標高が上で、私製の山名標が立ち木に括り付けてあります。山はまだ冬枯れ前で、展望は利きません。でも付近の黄葉が山頂を明るくしていました。この先の下りは、ここまでの道と比べるとやや急です。右も左も、広葉樹の多い自然林になりました。太陽光の降り注ぐ日本の自然林はとてもきれいです。でも5分ほど下ると尾根が平坦になり、送電線巡視路が右に鋭角で折れている箇所にやって来ました。直進すれば平野峠です。

黄色の標識が354号を指しているのを確認し、送電線巡視路を下ります。ここからは初めて歩く道。測量して造られたのか、勾配がほぼ一定です。谷側にザレ止めが設置されてはいるものの、道は斜面との同化が進んでいました。この季節は落ち葉も多いので、下りではスリップに注意が必要です。でもおよそ半ばまで下ると、道幅が広がり、歩きやすくなりました。354号を右に見送ると、まるで遊歩道のような極上の道に。最後は小沢に沿って歩き、車道に下り立ちました。

段落見出し 金波美(かなはみ)トンネルと金波美峠

きょうのコースの前半が終わりました。これより、舗装された立派な車道をテクテク、金波美トンネルまで歩きます。やや長ったらしい道ですが、眺望は悪くありません。安寺沢両岸の山なみ、安寺沢の集落、かつての秋山村の秋の色を楽しみながら、徐々に高度を稼いで行きます。でも4年前、旧秋山村のデン笠を歩いた時は、山のモミジがもっと鮮やかな赤でした。まだ早すぎるのかな? でも、落葉がかなり進んでいます。この秋の紅葉は、こんなものなのかも知れません。

車道を歩くこと約45分、秋山が飽き山になる前に、金波美トンネルに到着しました。銘板の文字が金色に輝いています。全長174m。幸い、出口が見えています。照明はありませんが、両端から光が入るので大丈夫でしょう。もし車が来ると怖いので、自分がよく見えるようにトンネルの中心線を歩きました。一人トボトボと ... 光に向かって ... トンネルを抜け一安心。振り返ると、トンネルに向かって左に、金波美峠への登り口がありました。さっそく山道に取り付きます。

7分ほどの登りで、金波美峠に到着。「池ノ上~鳥井立・御牧戸」を指す私設標識がありました。公設道標の「阿夫利山」と書かれた腕木が、その反対側を指しています。これより富岡までハイキングコースが整備されています。加えて赤いビニールテープが各所にビロビロと下がっているのは、上野原秋山トレイルレース大会のため、多くのランナーが試走するからでしょう。おそらくこれは非公式の目印。山を走る人と歩く人は、同じ感覚ではありません。自制を望みます。

段落見出し 高見山にパノラマ展望地

さて、ハイキングコースは、黄葉がきれいでした。最初の小ピークから下るところは、短い区間ですが、注意を促すテープやトラロープがあります。慎重に行きましょう。高見山(710m+)への登りは自然林がとても美しく、登る辛さが全くありませんでした。山頂に慎ましい山名標があります。これを見て、ハワイ出身の力士を久しぶりに思い出しました。展望はありません。でもその3分ほど先、素晴らしい展望地があるではありませんか。「おおぅ」思わず声を上げました。

まず、特徴ある大岳山を容易に同定できます。これを基点に御前山と三頭山を見つけ、合わせて奥多摩三山。三頭山から右手はるかに奥高尾へと続く笹尾根、その手前に権現山や雨降山を擁する権現山稜。そのまた手前には矢平山とコウモリ形の高柄山を擁する秋山山稜、そのまた手前、大地峠から派生する山なみにはデン笠や金比羅山。ここから俯瞰すると「笠」や「金」の形に見えません。これから冬になれば、もっと遠くの山々まで見えるようになるでしょう。

この眺望をおかずにしない手はなく、リュックを降ろし、少し遅めの昼食にしました。山と高原地図を見ると、阿夫利山頂に「展望なし」と書かれています。富岡から登る方々は、阿夫利山頂で引き返すのではなく、あと10分か15分、西へ足を延ばしてみてはどうでしょうか。ただ、この展望地は狭いので、大パーティーの休憩には向かないかも知れません。その場合は、富岡の墓地の上にある、休憩所の広場がお奨めです。素晴らしきかな(広い意味の)阿夫利山!

段落見出し 金剛山へ

阿夫利山の山頂にも、慎ましい山名標がありました。展望は大室山が何とか望めるだけです。南の空が暗くなり、急に強い風が吹いて来ました。少し先を急ぎましょう。山頂から3分ほど行くと、地図でははっきりしませんが、登山道が左に屈曲します。ここには道標が立っているので、道を間違えることはありません。「富岡バス停・秋山温泉」を指す方向に進みます。富岡に帰りの路線バスはないので、秋山温泉の送迎バスを利用するつもりです。

井戸沢ノ頭手前の鞍部では、濃い朱色のモミジも見られました。よく見ると、緑色から朱色までのグラデーションがきれいです。小峰に登り返すと、そこが井戸沢ノ頭。丸木の椅子がずらり並べてあります。ここで少し遠回りになりますが、右に分岐する金剛山への道に進みます。しばらく急勾配を下ると、すぐに平坦な道になりました。この辺りには、まだ緑色のモミジがありましたが、いつ紅葉するのでしょうか?見上げると、葉と葉の重なりにできる影がきれいでした。

金剛山への登りは岩稜でした。しっかりした足場とホールドがあるので、問題ありません。途中で振り返ると、井戸沢ノ頭と阿夫利山とが重なって見えました。山頂(632m)に到着すると、新旧の祠があり、古い方は木造ですでに倒壊。新しい方は石造りで、「古峯神社」という名が刻まれています。これまでに、朽ちた祠を各地で見てきましたが、いずこでも片づけるということはしないで、そのまま自然に帰す習わしのようです。

段落見出し 富岡へ下山

山頂を辞し、東に延びる尾根を下ります。下り始めると、また強風が吹いてきました。どんどん下ります。落ち葉が堆積して、フカフカした感じが足から伝わってきました。注意するのは、尾根を横切るU字状の溝から、左のトラバース道に入るところです。道標はありません。尾根の立ち木にテープが巻いてありますが、これは「こっちに進め」ではなく、「ここで曲がれ」の意味だと思いましょう。あとは迷いそうなところもなく下り続け、やがて平坦地になりました。

461m地点も過ぎ、引き続き緩やかに下って行くと、動物除けの頑丈なゲートがありました。簡単に開きましたが、閉じて鎖で結わえるのが、ちょっと面倒です。そしてゲートのすぐ先、もう少しで林道に下りる地点で、パアーッと広大な空間が出現しました! ベンチとテーブルもある、素晴らしい展望台です。これはびっくり。きょうは3か所に優れた展望地がありましたが、ここは、山と里とを箱庭のように見晴らせるという点で、ピカイチの展望台です。

その展望の中で、最もすてきだと思ったのは、まるで絵本の絵のような、富岡の田園風景です。晩秋の空気、和風の民家、色分けされた棚田、双耳峰めいたデン笠と金比羅山、その背景には豊穣感のある高柄山。できれば四季ごとに、ここで定点撮影してみたいと思いました。何度も何度もシャッターを切っていたら、ついに電池切れ。予備電池を ... 何と、忘れてきました。あとは瞼に焼き付けるのみです。雪降る里、桜咲く里、緑深い里、黄金色の里を想像しながら。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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