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六百沢左岸尾根

六百沢左岸尾根888m地点

六百沢左岸尾根の888m地点

六百沢は、北丹沢の早戸川の支流で、宮ヶ瀬湖の源流の一つです。

六百沢左岸尾根に、特に危険な箇所はありません。始めの急登をこなせば、快適な尾根歩きができるでしょう。

焼山展望台より望む栂立尾根

バス停 神奈中バス: 本厚木駅 ⇔ 宮ヶ瀬 登山口

地図 地理院地図: 六百沢左岸尾根888m地点

天気 六百沢左岸尾根の天気: 清川村 , 宮ヶ瀬

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コース & タイム 鉄道駅 本厚木駅 バス停 6:55 == 7:44 宮ヶ瀬 7:47 --- 8:33 金沢橋 8:40 --- 8:58 早戸川橋 8:58 --- 9:18 六百沢左岸尾根取り付き 9:19 --- 10:16 露岩 10:21 --- 10:37 710m 10:37 --- 11:08 888m 11:08 --- 11:26 940m (昼食) 11:50 --- 11:57 1000m 11:57 --- 12:05 1043m 12:05 --- 12:25 鐘沢ノ頭 12:31 --- 12:46 1043m 12:57 ---(間違った尾根を下りながら何度も立ち止まる)--- 13:30 引き返す 13:32 --- 13:52 1043m 13:52 --- 14:01 1000m (栂立尾根屈曲点) 14:03 --- 14:34 栂立ノ頭 14:39 --- 15:06 六百沢ノ頭 15:07 --- 15:46 タロベエ峰 15:47 --- 15:48 新多摩線32号鉄塔 15:58 --- 16:40 金沢橋 16:41 ---17:20 宮ヶ瀬 (イルミネーション見物) バス停 17:51 == 18:48 本厚木駅 鉄道駅
※歩行時間には写真撮影と地図・地形読みの時間が含まれています。
鐘沢ノ頭 かねさわのあたま、標高:1109m 単独  2017.11.26 全 9時間43分(ロスタイム55分を含む) 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

11月25日(土)、六百沢左岸尾根を登ってきました。丹沢の地図を広げると、広そうな尾根に記された「888」の三文字。どんなところか、いつか行って見たいと思い始めたのは、もう何年も前のことです。ようやく今回、この888m地点の探訪を計画しました。併せて、昨年の栂立尾根の下りで道を間違えた地点を検証して来ます。日の短いこの季節、道迷いはできません。ところが、下山路でまた判断を誤り、危うくヘッデンのお世話になるところでした。

段落見出し 宮ヶ瀬から早戸川右岸へ

本厚木駅前で、朝一番の宮ヶ瀬行きバスに乗り込みました。乗客の大部分が登山姿です。煤ヶ谷、土山峠、三叉路のそれぞれで、6,7名が下車。終点まで乗った3名は皆、早戸川林道に進みました。この林道は湖畔の等高線そのままに、くねくねとカーブする長ったらしい道です。でも今は紅葉が目を楽しませてくれるので、飽くことがありません。特に、汁垂橋(しるたればし)と金沢橋(かねさわばし)から眺める紅葉は、急ぐ足もつい止まってしまうほどの美しさでした。

橋の上の釣り人、林道に立つ野鳥撮影のカメラマンたちと、小声で挨拶を交わします。早戸川橋に来ると、橋の上に人がずらりと並んでいました。三脚に大口径レンズ。何を狙っているのでしょうか? 私は早戸川橋を渡らず、早戸川右岸の林道に進みます。10分ほど行くと、六百沢に断ち切られるようにして林道が終わりました。コンクリート壁の梯子を降りて、飛び石伝いに沢を越えます。地形図にある右手の吊橋は、施錠されていました。ここから狭い作業道を進みます。

作業道はしっかり付けられていて、その上を低い電線が走っています。子供の頃によく見た、木製電柱に電笠と裸電球だけのレトロな照明もありました。今いる場所が、六百沢左岸尾根の末端です。左に取り付きやすそうな箇所を探しながら、吊橋から5分ほど行くと、前方に堰堤が見えてきました。この先は谷になるので、ここから尾根に取り付きます。尾根を見上げると、なかなかの急登ですが、四駆(両手両足)モードで登れば、安全は十分に確保できると思いました。

段落見出し 六百沢左岸尾根を登る

脚力と腕力に任せ、ひたすら登ります。尾根に乗ると薄い踏み跡が見つかり、手は使わなくてもよくなりました。林相は、広葉樹にアカマツの混交林。左側の谷に陽が差し、所々で美しい紅葉が見られます。突然下の方から犬の吠えるような大きな声が聞こえてびっくり。よく聞くと、マス釣り場の駐車場のアナウンスでした。しばらく後、今度は上空に「ピヒュー、ピヒュー」とやや軋むような声。見上げると、オオタカです。私を見て一旋回し、どこかに飛んで行きました。

尾根は、左(南東)がヒノキの植林、右(北西)が自然林になりました。落ち葉の敷き詰められた、足に優しい道です。樹木のまばらな場所で振り返ると、枝を透かして宮ヶ瀬湖と早戸川の青い水を望めました。もしうるさい木の枝がなければ、素晴らしい構図です。どこかにスッキリ見渡せる展望地はないかと、振り返り、振り返り、登って行きましたが、最後まで見つかりませんでした。眺望が優れないとはいえ、尾根自体は円やかで、薮もゴミもなく、快適です。

標高600mを過ぎたあたりの尾根上に、どっしり大きな露岩がありました。左側にテープがあったので、いつもそうするように、まず反対の右側を偵察してみます。すると問題なく登れそうなので、そのまま登って行くと、2か所にトラロープが設置されていて、正解でした。その後も相変わらず気持ちのいい尾根が続きます。次第に右から大きな尾根が近づいてきました。やがて行く手に、にせピークのような稜線が現れました。空が透けて見えます。そこが標高700mでしょう。

段落見出し トリプルエイト

655mからの尾根を合わせるその稜線に立つと、登ってきた尾根が、心もち左に折れます。右手の自然林がほぼ落葉し終わり、枝越しに焼山から姫次に至る稜線を望めました。地面にフカフカ感があるのはカラマツ林。その黄葉も大部分すでに落ちています。空けたカラマツの枝越しに望める宮ヶ瀬ダム。そして、そこから少しだけ登ると、明るい平坦地に出ました。ここが訪ねて来た標高888m地点です。特に目を引くようなものは、何も見当たりません。ただ、のどかです。

この平坦地に「〇〇平」のようなニックネームを考えたのですが、いい名を思いつきませんでした。単純に、トリプルエイトとしておきましょう。お腹が空いたので、どこかで昼食にしようと、その適地を探して行きました。幅広で緩やかな尾根、ますます雰囲気の良い自然林。紅葉もさらに美しく、奥多摩の石尾根も見えたりして、知らず知らず、940m付近まで登ってしまいました。栂立尾根に至る前に、リュックを下ろして昼食にします。まずは熱々の紅茶でひとり祝杯!

昼食を終え、上を目指します。右手の樹木が疎になって、蛭ヶ岳や榛ノ木丸をよく望めるようになりました。蛭ヶ岳の手前に見える尾根が、本間ノ頭の北尾根でしょうか。眺望を楽しみながら、そこからゆっくりと10分ほど登ると、勾配が緩くなりました。実はそこが栂立尾根と出合う1000m地点だったのですが、私は左から上がって来るその栂立尾根に気づかず、素通りしてしまいました。そして、左から別の尾根を合わせる1043m地点を、1000mと勘違いしたのです。

段落見出し 失敗のいきさつ : 間違った尾根を下る

1043m1000mと思い込んでいる)では、本間ノ頭を望めました。きょうは鐘沢ノ頭まで、栂立尾根を登って行きます。清川村の境界標である赤帽黒杭が点々と見られるようになり、栂立尾根に入ったことを実感しました。大きなモミ、ツガ、ブナなどの木がたくさん見られます。ほどなく左手に大山を望み、特徴あるブナを見て、鐘沢ノ頭(1109m)に到着しました。昨年は1000mから約30分かかったのに、今回は約20分。いやに早かったな、まあ気のせいか、と思いました。

本日の最高地点、鐘沢ノ頭で休憩しました。金沢には砂金にまつわる伝説があり、その源頭だから「金沢ノ頭」でもいいんじゃないかな。もしや血なまぐさい事件でも起こり、鎮魂のための鐘に変わったのかな? 地名に興味は尽きません。さて、下山です。1043m1000mと思い込んでいる)まで下りてきて、東南東に延びる尾根を、栂立尾根だと思って下り始めました。それにしても、1043m地点はどこにあったのだろう? 1年経つと記憶もあやふやになるな、と思いました。

何だか栂立尾根とは違うような気がして来ました。何度も立ち止まり、地図とコンパスを合わせて、方角を確かめました。私は長らくコンパスに絶大の信頼をおいてきましたが、昨年の1月、この方法で栂立尾根32号鉄塔からの下山路を間違え、金沢に下りてしまったことがあります。そこでデジカメの電子コンパスをONにすると、磁石のコンパスと全く同じ方角が表れました。よし、間違いない。そう思って下って行くうち、見える風景が変なことに気づきました。

段落見出し 失敗のいきさつ : 正しい尾根を下る

まず、前方右手に大山が見えました。そして正面に半原高取山と仏果山。これは変です。極めつけは、左隣の尾根に栂立ノ頭があったこと。わが愛する栂立ノ頭、見まごうことはありません。ここは栂立尾根ではない! 痛恨のミス! ウーム、このまま下り切ろうか? でも行く手にどんな障碍があるか分かりません。おまけに金沢林道は崩落地の復旧工事で通行止め。引き返します。遅れを早く取り戻そうと、つい足取りが速まり、脚が疲れてきました。そういえば、この尾根には清川村の境界杭がない!

1043mに戻りました。勘違いも解けました。いったいどこまで下ったのでしょうか? 不思議なことに、帰宅後にGPSの位置情報を調べると、1043mから間違った尾根を下って引き返し、1043mに戻るまでに撮影した写真の位置データは、すべて1043mと同じでした。この間、55分を費やしています。金沢の魔力? いやいや、しかしこの謎は解けていません。おそらく、900m付近まで下ったのではないかと推測しています。ともかく無事に正しい道に復帰でき、ほっとしました。

今こそ、1000mに向かって下ります。右手に現れるはずの尾根を探しながら行くと、あの緩い勾配の地点で栂立尾根が右に屈曲していました。間違いなく、ここが1000mです。これ以降は、自信をもって栂立尾根を下って行きました。清川村の境界杭があります。見覚えのある「異種合体の木」もあります。そして登りに転じると「着かず離れずの木」を見て、栂立ノ頭に到着しました。わが懐かしの峰です。すでに時間との闘いに入っていましたが、ここでお茶にしました。

段落見出し 鹿柵ゲーム

栂立ノ頭からタロベエ峰の下まで、鹿柵(植生保護柵)があり、各所で鹿柵の右を歩くか、左を歩くか、選択を迫られます。鹿柵に扉はあまりなく、脚立で越えるか、破れ穴をくぐることになります。栂立ノ頭直近の脚立は、昨年3度乗り越えましたが、今回足を掛けたら壊れそうだったので、下をくぐりました。すぐに左へ急下降します。この下りは長く感じました。鞍部で扉を通り抜け、六百沢ノ頭まで登り返します。六百沢ノ頭で倒木と鹿柵を同時に跨ぎ、北に下ります。

どんどん下って行くと、後方左手から日が差してきました。振り返ると、今しも六百沢左岸尾根に太陽が隠れようとするところ。自分の影が長くなりました。幅広いゲレンデ状の場所は、冬に美しい雪原だったところです。そこが終わると脚立があり、これも壊れそうだったので下をくぐりました。ところが鹿柵の右を行くとすぐに、鹿柵が倒れていました。つまり先ほどの脚立は無視して、鹿柵の左側を行っても大丈夫です。次の鞍部の鹿柵は、普通に怖々乗り越えました。

登り返してタロベエ峰に到着。ここは容易に鹿柵を通り抜けられます。そのすぐ下の、32号送電鉄塔で、再びお茶にしました。魔法瓶からまだ十分に温かい紅茶を注いで飲みます。鉄塔を真下から見上げたり、南山を眺めて、ここの方が標高が低いことを確かめたりしました。まだ山にいるこの時間が、とても貴重に思えてきます。でもすぐに暗くなるでしょう。栂立尾根末端の急なヤブ道は、ヘッデンで下りたくありません。鉄塔に別れを告げ、最後の行程に入りました。

段落見出し 金沢の誘い

鉄塔直下の脚立を乗り越え、鹿柵の右側を歩いて行きます。すると、明瞭な踏み跡が右に分岐しました。思わず嬉しくなりそうなほど、きれいな踏み跡です。でもこれに誘い込まれてはいけません。昨年1月の下りでは、ここに引き込まれ、金沢に下りてしまいました。あくまで鹿柵に沿って歩き続けながら、軽く登り返すと、鹿柵が右に折れます。この角にある破れ穴を通って、その向こう側に下るのが正解ですが、今回見ると鹿柵が破損していて、容易に通り抜けられました。

ミヤマシキミの赤い実がありました。もうフラッシュなしでは手持ち撮影ができないほど暗くなっていました。どんどん下ります。尾根の最終端の手前で右に逸れ、うす暗くなった薮道を下って行くと、まだ明るい早戸川林道が見えてきました。大きなレンズとカメラを抱えた人が歩いています。16時40分、無事に金沢橋のたもとに下り立ちました。真っ暗になる前に汁垂隧道を抜けたいと思い、足を速めます。でも夕闇の足は速く、あっという間に真っ暗になりました。

宮ヶ瀬の方からパーンと、銃声のような音が聞こえました。この音が入り江の両岸にこだましながら、パンパンパンと入り江の奥まで、あたかも湖面を走り抜けるように響き渡りました。これが幾たびか繰り返されて、これは銃声ではなく、花火の音だと気づきました。宮ヶ瀬に至ると、あの広大な駐車場が満杯! スロープにも車が数珠つなぎ。煌々と照らされた夜店。まるで縁日のような賑わいです。きょうは、宮ヶ瀬のクリスマスイベント、その初日だったのでした。

段落見出し 反省と感謝

きょうは自分自身の慢心で気が緩み、勘違いを生じ、思わぬミスを犯しました。遅れを早く取り戻そうとして、体力も余計に消耗しました。幸い明るいうちに林道に下りられましたが、あと一歩でヘッデンを使う羽目になるところでした。大いに反省するところですが、無事に帰宅できたのは、本当に感謝です。帰宅時刻の遅れは、温泉に立ち寄るのをあきらめることで、挽回しました。振り返ると、プチ冒険があり、イルミネーションも見られて、とても楽しい一日でした。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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